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暁の星と月
第4章 夜啼鳥の夢
「暁!」
気色ばむ大紋の唇を白く細い暁の指先が愛しげに塞ぐ。
「…僕は貴方が好きです。けれど…どんなに貴方が好きでも、貴方と結婚することも、貴方の子供を産むことも出来ない…。
貴方に何も与えてあげられない…。
…こんな僕とずっと一緒にいて、のちになって後悔だけはされたくないのです。
…貴方には、最良の人生を選択して欲しいのです。
今なら…まだ間に合います。…僕も貴方を喪った傷が浅くで済みます…だから…」

大紋の大きな手が暁の手を折れるほど握りしめる。
そして…
「うるさい!」
人柄が豹変したかのように声を荒げて…駄々をこねる子供のように叫んだ。
「うるさい!うるさい!うるさい!」
暁は呆気に取られる。
「…何を言い出すのか黙って聞いていたら、そんな愚にもつかぬことを…!君は馬鹿か?」
「…なっ…!」
馬鹿呼ばわりされて、暁は眉を吊り上げる。
「僕は暁だけを愛しているんだよ!暁以外は愛せないんだよ!暁以外の人間はどうでもいいんだよ!…もう3年間も僕の恋人でいて、そんなこともわからないのか⁉︎そんなことも気づかなかったのか⁉︎」
暁は茫然と大紋を見つめる。
大紋は暁の肩を折れるほど掴んだまま、続ける。
「結婚⁈そんなこと、どうでもいいよ。子供だって欲しくない。跡取りなんて…は!貴族でもないし、そんなご大層な家じゃないさ。
…君に比べたら…!君が僕と一緒にいてくれるなら、他のどんなものを引き換えにしても何も惜しくはない!
…僕は君に恋してからずっとずっと考えていた。君を得られるなら、他のどんなものを犠牲にしても構わないと…ずっと神に祈っていたんだ。
今なら傷が浅く済む⁉︎…ふざけるな!こっちは既に満身創痍だよ。14歳の君と逢ったあの日から…ずっと!僕の心は君への愛と情熱と報われなさで、傷だらけさ!
…そんなことも気づかないのか⁉︎…君は馬鹿だ、大馬鹿だ!」

暁の漆黒の闇のような瞳から静かに透明な涙が溢れ落ちる。
薄桃色の可憐な唇が小刻みに震えだした。
大紋ははっと我に返り、慌てて暁を抱き締める。
「ご、ごめん!怒鳴ったりして、ごめん!ごめん!バ、馬鹿なんて言ったりして、ごめん!」
…暁は男に声を荒げられるのが何より苦痛なのに…
大紋は激しく後悔した。
暁は静かに啜り泣きながら首を振る。
「…嬉しいんです…嬉しくて泣いているんです…」
「…あ、暁…」








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