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暁の星と月
第1章 暗闇の中の光
執事の生田は東翼、西翼と順番に広い邸内をゆっくりわかりやすく案内をした。
夜会が催された際に使う広間や、音楽室、泊まり客があった時に使われる来賓用の寝室など、普段は使用しない部屋がたくさんあり、
「…迷子になりそう…」
暁は思わず、呆然と呟いた。
「すぐにお馴れになりますよ」
生田は穏やかに微笑んだ。
暁は頷き、笑い返す。
…僕にはおじいちゃんはいないけれど、もしいるのなら生田さんみたいな人だといいな。

生田は、暁の気持ちを和らげる為に図書室に案内する。
一階の奥にある広々とした図書室は、読書好きな礼也の為に礼也の祖父が増築して作った部屋だった。
中に案内された暁は、目を見張ったまま立ち竦む。
高い高い天井、その天井まで作り付けの本棚が設置されており、皮の高価そうな蔵書が整然と並べられている。
背表紙には日本語のものはもとより、暁には見たこともないような文字で書かれた、恐らくは外国の書籍がびっしりと並んでいた。
「…すごい…!」
ようやく発せられた一言は驚嘆の一言であった。
「旦那様は大変な読書家でいらっしゃいます。
文学、語学、経済、科学、歴史、哲学、宗教学、天文学、建築、美術、音楽…様々な本がこちらには収められております。高名な大学の先生も舌を巻かれるほどの蔵書の質と量だそうですよ」
「…わあ…!」
暁の綺麗な顔が喜びに輝く。
生田はそんな暁を優しく見守る。
「…暁様は本がお好きなようですね」
暁は頷く。
「はい。本は大好きです!…うちは貧しかったから、本は買えなかったんですけど…学校に通っていた時は、図書室の本を片っ端から読みました。…でも、二年前くらいからは学校にも通えなくなったから、暫く本は読んでいないのですけど…」
恥ずかしそうに言う暁に、生田は少し沈痛な面持ちで語りかける。
「暁様の母上、ゆきのさんは曾てこのお屋敷に勤めておられました。…先代の旦那様のご寵愛を受けられ、暁様を身篭られ…その事実が私の耳に入った時には既にゆきのさんは屋敷を出されていました…。今でも私は彼女にしてあげられたことがあったのではと悔やんでなりません」
暁は必死で首を振る。
「そんなこと!生田さんのせいではありません!」
「礼也様が暁様を救ってくださり、本当に良かった…」
生田の威厳と優しさが同居する眼差しに暁の心は穏やかに温められる。
二人はそっと微笑み合った。




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