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暁の星と月
第6章 その花のもとにて
北白川伯爵邸で開かれたガーデンパーティーは多くの来賓で華やかに賑わっていた。
天候にも恵まれ、広々とした美しいイングリッシュガーデンには洒落た天蓋が幾つも設置され、思い思いの場所で寛いだり、会話を楽しめるようになっている。
伯爵家の庭師は実に優れた技術とセンスの持ち主ばかりだ。
日本では見たことがないような外国産の花々、貴重な花々が品良く咲き乱れ、来賓達の眼を愉しませる。
もちろん、それを総合的に演出したり、監修するのは執事の月城の仕事だ。
執事はただ単に事務的な仕事が出来れば良いだけではない。
いかに美しく、他の貴族の屋敷や庭園のそれとの洗練度の差別化を図るかが執事の腕と美的感覚に掛かっているのだ。

「…本当に見事なお庭ねえ…。まるでイギリスのカントリーハウスの庭園みたい。ヨークのソールズベリー伯爵邸にお邪魔したことがあるのだけど、正にこのように美しい絵画みたいなお庭だったわ」
シャンパンを片手に感心したように周りを見渡すのは、雪子だ。
雪子は梨央と同じピアノ教師について学んでいるので、梨央とは旧知の仲だった。
引っ込み思案の大人しい梨央だが、溌剌として明るく美しい雪子は、慕っている従姉妹の光を彷彿するようで、安心して話すことができる数少ない友人の一人なのだ。
雪子はつばの広いアイボリーの帽子の下の瞳を輝かせる。
今日は比較的大人しいクリーム色のアフタヌーンドレスを身につけているが、生来の美貌が更に引き立たせていた。
「雪子さんはイギリスにも行かれたことがあるのですね」
暁は雪子の快活なお喋りを好ましく思う。
「お兄様がオックスフォードに留学されていた時に押しかけたの。…たまたまロンドンのオペラハウスでバレエを鑑賞していたら、お隣の席の方がソールズベリー伯爵家のお坊ちゃまで、歌麿の話しで盛り上がったらヨークのお屋敷にご招待して下さったのよ」
あっけらかんと話す雪子に暁は驚く。
「凄いですね、雪子さんは…。語学力もですけれど、その度胸が…」
傍らの大紋がやれやれといったように肩を竦める。
「度胸がありすぎるのも良し悪しだよ。外国でも物怖じせずに鉄砲玉のように飛び出してしまうからね」
大紋は今日は上質な濃灰色のジャケットに春らしい明るい空色のネクタイ、同色のチーフを飾っている。
昼間の会なのでカジュアルなスタイルなのもその理知的で端正な貌に良く似合っていた。

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