この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
暁の星と月
第7章 愛と哀しみの円舞曲
その日、依頼者との打ち合わせを終えた大紋は銀座を歩いていた。
平日の午後とはいえ、銀座は買い物客の人々、歌舞伎座の観劇の華やかな婦人たちなどで賑わっていた。
空は晴れわたり、銀座の柳の緑は生き生きと風にそよいでいる。
…一番良い季節だな…。
打ち合わせが順調に行ったこともあり、大紋は弾む気持ちのまま颯爽と銀座の目抜き通りを歩く。

…ふと思いついて和光に足を向ける。
…暁の就職祝いに、何かプレゼントしたいな…。

眼を奪われるほどに美しく艶めいた愛しい恋人…。
暁の貌を思い浮かべるだけで、大紋は胸がときめく。
明るい気持ちのまま、和光のショーウィンドウを眺めていると…。

背後から遠慮勝ちな…しかしはっきりと意志を感じる声が聞こえてきた。
「…春馬様…春馬様…ですよね?」
急いで振り返ると…
そこには…
綸子縮緬の上品な藤色の友禅の振り袖を着た西坊城絢子が佇んでいた。
美しく髪を結い上げ、うっすらと化粧を施した絢子はしっとりとした美しさを匂わせるような大人の女性へと成長していた。

…二年前、はっきりと絢子の愛を拒んだ大紋は一瞬戸惑い、しかしすぐに大人の余裕でそれを覆い隠し、穏やかに微笑む。
「ご無沙汰しております。絢子さん、お元気そうで何よりです。…銀座にはご観劇ですか?」
絢子は屈託無く大紋との再会を喜ぶ。
「お茶の先生の喜寿のお祝いにお扇子を求めに来たのです。お買い物を終えて歩いておりましたら…思いがけず春馬様をお見かけしたので…ついお声をかけてしまいました」
絢子の背後には銀鼠色の着物を着た品の良い老婆が付き添っていた。
恐らくは絢子の乳母だろう。
大紋を見ると恭しく頭を下げた。
「そうですか。…雪子が英国に留学してから、絢子さんは我が家にはおいでにならなくなりましたから、本当にお久しぶりですね。」

雪子は昨年の秋からオックスフォード大学に留学していた。
表向きは、海外で仕事をしたい夢の為だったが、その胸の内は…
「…暁様はやっぱり私に振り向いては下さらないみたい…。さすがに諦めて、新しい恋を探すわ」
と、大紋にだけそっと語り寂しげに笑った。
妹の長年の純愛に大紋は胸が激しく痛み、言葉をかけることができなかった。
暁は女性に興味はない。
雪子のことは親友のように感じていたが、それ以上の感情は持ち合わせてはいないのだ。












/479ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ