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暁の星と月
第7章 愛と哀しみの円舞曲
驚いたことに絢子は、大紋に拒まれた後も雪子の友人達と一緒に大紋の屋敷に時折遊びに来た。
大紋は仕事に忙しく、屋敷に帰宅するのは深夜が殆どだったので、滅多に顔を合わすことはなかったが、たまさかの休日に、庭園に設えたテニスコートで雪子とテニスに興じる絢子に遭遇したこともある。

休日なのでニューヨークタイムズを片手に、整髪料も付けない無造作な髪をして、カジュアルなシャツとセーターを身につけサンルームに向かう大紋と目が合ったことがあった。
純白のやや裾が短いドレスのユニフォームを身につけた絢子はテニスコートから眩しそうな切なそうな顔をして、律儀にお辞儀をした。
…まだ大紋を明らかに慕っている熱い眼差しをしていた。
大紋はそんな絢子にやや戸惑いつつも、彼女の生真面目で純粋な性質が伝わり、不快な気持ちにはならなかった。
申し訳なさと憐憫にも似た気持ちから、優しく微笑み返した。
…そんな絢子も雪子が留学してからは、大紋の屋敷を訪れることもなくなり、ここ半年以上は顔を見ることはなかった。

大紋は密かにほっとしていた。
絢子は間違いなく申し分のない美しく淑やかな理想的な令嬢である。
女性を見る眼が厳しい大紋から見ても、美しさ、気品、知性、性格と非の打ち所がないほどだ。
…しかし、自分は絢子を愛することはできない。
いや…絢子だけではなく、暁以外の誰も愛することはできないのだ。

だから絢子には早く自分を忘れ、良い伴侶を見つけて幸せになってほしい…。
それが大紋の切なる願いであった。

そんな大紋の気持ちを知ってか知らずか、絢子は真っ直ぐな眼差しで大紋を見つめた。
「…こんなところでお会いできるなんて…驚きました。…嬉しいです。…あ、あの…宜しければ…少し…お話できませんか…?…ほんの少しで構わないのです…。春馬様がお嫌でなければ…」
胸の前で握りしめた白く小さな手が震えている。
背後の老婆が、愛おしげに声をかける。
「…お嬢様…」
そして、大紋を見上げると懇願するように深々とお辞儀をした。
大紋は妹と同じ年の若い女性にこれ以上恥を掻かせるのは忍びなく…また、必死に自分に訴える絢子に胸打たれ、優しく提案した。
「…では、資生堂パーラーでお茶でもいかがですか?
私も、丁度珈琲が飲みたかったところなのです」
絢子はその言葉を聞くと喜びに顔を輝かせ、少し涙ぐみながら頷いたのだった。
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