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暁の星と月
第7章 愛と哀しみの円舞曲
資生堂パーラーでは、女店員が二人を見ると眩し気な表情をして、窓際の一番良い席に案内をしてくれた。
大紋の最高級品と思しき、濃灰のスーツと、ストライプの洒落たシャツ、濃紺のレジメンタルタイという水際立った服装と西洋人並みに背の高いすらりとしたスタイル、整った顔立ちと文句のつけようのない紳士ぶりだからだろう。
一方、絢子も高価な鼈甲の髪留めを飾り、一目で極上品だと分かる友禅の振り袖を着ている。
楚々とした美貌で小柄で華奢な身体つきの絢子が、大柄な大紋に優しくエスコートされながら席に着く様は周りの女性客から羨望の眼差しで見つめられていた。
…側から見ると、似合いのカップルにでも見えるのだろうか…。
大紋は周囲の視線を感じながら、ふと思う。
…皮肉なものだな…。
暁と外を歩く時はなるべく親し気に見えないように気を使っているというのに…。
…手を繋ぐことも、頻繁に見つめ合うことも、愛を語ることもできない…。
若い暁に寂しく惨めな思いをさせているのではないか…と、時折大紋は心配になることがある。
暁は何も言わずに、大紋と逢える時間を待ってくれている。
暫く逢えずにいて、漸く逢えると黙って抱きついてくる。
暁のそれまでの寂しさがその華奢な身体から伝わってきて、だからこそ、愛おしく…狂おしく彼を求めてしまうのだ。

大紋が珈琲を、絢子がロイヤルミルクティーを注文すると、絢子は俯いたままか細い声で呟いた。
「…浅ましい女だと、思っていらっしゃるでしょうね…」
「絢子さん…?」
大紋は驚いて絢子を見た。
「…二年前…春馬様に他に愛する方がいらっしゃるとお聞きして…私とは結婚できないとはっきりと言われて…三日三晩泣き暮らしました…。…涙って、いつまで経っても枯れないものなのですね…」
泣き笑いの表情で絢子は大紋を見た。
「…もう諦めよう…そう何度も思いました。…両親の勧めに従ってお見合いもしました…。…でも…どんなにご立派な紳士でも、春馬様のように私の胸を焦がす方はおられませんでした…」
訥々と話す絢子の口調は大紋の胸に響いた。
「…こっそり春馬様が出場される馬術大会にも足を運びました。…遠くからでも、春馬様を拝見したかったのです。
…馬を操る春馬様は本当に素敵で…拝見して涙が出ました…。私が初めて春馬様を見て、恋に落ちてしまった時と少しもお変わりではなかった…」


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