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暁の星と月
第7章 愛と哀しみの円舞曲
興味を持った暁は重ねて尋ねた。
「そんなにお美しい方なのですか…。梨央さんに、似ていらっしゃいますか?」
礼也は明るく笑いながら首を振る。
「いや、全く。…綾香さんは北白川伯爵によく似ておられる。西洋人めいた美貌、輝くようなオーラ。…そして、気高さ…。とても浅草オペラの歌手には見えない。
たまに言葉遣いは下町訛りが出てしまうが、立ち居振る舞いや物腰、マナーなども市井育ちの女性とは思えない気品がある。
やはり血は争えないものだな」
そんなにも美しく魅力的な女性なのか…。
「梨央さんは亡くなられたお母様に生き写しだからね。…だから、お二人が並んでいても俄かには姉妹とは気づかれないだろうね」

そして、慈しむような…やや淋しげにも見える表情で続けた。
「…梨央さんは、綾香さんに夢中だよ。まるで綾香さんを恋人のように慕って、寄り添っておられる。
…お二人は産まれながらの姉妹のように仲睦まじい」

暁は思わず、兄の為にそっと言葉をかけた。
「梨央さんは、初めてお姉様がお出来になってお喜びなのでしょう。…僕もそうでしたから…。
この屋敷に引き取られ、兄さんと暮らせて…夢のように幸せでしたから…」
それを聴いた礼也は優しく微笑んだ。
「ありがとう、暁。…私もお前という弟が出来て、本当に嬉しかったよ。
…そうだな。私の喜びを、梨央さんも今、味わっておられるのだな。…それなら私もそのことをお喜び申し上げなくてはならないな」
そう自分に言い聞かせるように呟いた礼也が、暁は少し気になったのだ。

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