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暁の星と月
第7章 愛と哀しみの円舞曲
…最近、兄さんが少しお淋しそうなのは、梨央さんが綾香さんに夢中だからなのかな…。
…相変わらず、兄さんは梨央さんを誰よりも愛しておられるし…。
ゆっくりと窓辺に近づき、カーテンを手繰り窓の外を見る。
…兄さんと梨央さんのことを考えても、もうそんなには辛くはないけれど…。
でも、いざご結婚されるとなればまた動揺するのかな…。
暁は寂しく笑う。

大紋という恋人がいて彼に激しく愛され、自分も彼を愛していても、やはり暁にとって礼也は代わりがいない特別な存在なのだ。
礼也のことを考えるだけで、胸がときめき苦しくなる。
礼也が無邪気に暁を抱きしめたり、顔を触れたりすると、心臓が早鐘のように打つ。
…礼也の恋人になりたいとはもはや思わないが、それでも暁には、礼也は誰よりも心を震わす存在であった。

「…あ、兄さんだ…」
メルセデスが屋敷の車寄せに滑り込んだ音がした。
暁は14歳の少年のように、図書室から走り出し、玄関へと急いだ。


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