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暁の星と月
第7章 愛と哀しみの円舞曲
絢子は白い手を組み合わせ、細かく震えている。
…先日、あれだけ容赦なく自分に拒まれ、その挙句このことを言い出すのに…どれだけの勇気を振り絞ったことだろう。
大紋の胸に絢子への愛憐の想いがじわじわと湧き上がった。
絢子の傍らの西坊城子爵夫妻は、大紋を見ると申し訳なさげに深々と頭を下げた。
大紋は、後ろで自分の言葉を固唾を飲んで見守っている暁の存在を痛いほど感じながらも、絢子に優しく笑いかけると、そっと手を差し出した。

「…喜んで。…さあ…絢子さん…」
絢子が信じられないように潤んだ瞳で大紋を見上げる。
そして、泣き出しそうな可憐な顔で頷き、おずおずとその小さな手を重ねた。

暁が小さく息を呑む音が聞こえた。
大紋の胸は小さく傷んだ。
だが、今、自分を一途に慕い続けてくれた女性の願いを無下に断ることはできなかった。

大紋は絢子の小さな手を取り、フロアの中央に進み出る。
美しき青きドナウの調べに合わせて、絢子を優しくリードする。
絢子は泣き笑いの顔で大紋を見つめた。
「…軽蔑なさったでしょうね…私のことを…あんなに恥知らずなことを言い出したのですもの…」
大紋は包み込むように絢子を見つめ、首を振る。
「…いいえ。…軽蔑などしません。…貴女のあの時のお言葉は、私の胸に確かに深く刺さったのです。…人は真剣に恋をすると、思いもかけないことを言い出す…けれど、それは決して醜いことではないと…忘れられない言葉となり、相手の心に残るのです…。
貴女のお気持ちは確かに私に届きました。…けれど…貴女の願いを叶えて差し上げられなくて、申し訳ありません…」
絢子は可憐な大きな瞳からぽろぽろと涙を流す。
「…春馬様はお優しすぎます…もっと…もっと嫌な方だったら良かったのに…。そうしたら、絢子は春馬様を簡単に忘れられたのに…」
「…絢子さん…」
「…私は春馬様を拝見したその日から、春馬様のことしか考えておりません。私の心の中には春馬様しかいないのです。…ですから絢子は、生涯どの殿方の元にもお嫁には参りません。絢子は独身を貫くことに決めました」
大紋は思わず絶句する。
「絢子さん…!」
「春馬様のお嫁様になれないのならば、どなたの元にも参りません。…密かな絢子の我儘をお許し下さいませ」
絢子の白い頬に涙が伝う。
大紋はもはや彼女に掛ける言葉すら見つけることができなかった。




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