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暁の星と月
第7章 愛と哀しみの円舞曲
大紋は絢子の傍に座る。
「…絢子さん…」
絢子の震える白い手が、大紋を求め空を彷徨う。
その手をそっと握りしめる。
…夏だというのに氷のように冷たい手…。
大紋の胸が鋭く痛む。
「…ごめんなさい…春馬様…私…私…」
子供のように泣き出す絢子に、その手を温めるように両手で包み込む。
「…何も仰らないでください。…絢子さん、ご無事で良かった…」
大紋の優しい声を聞き、絢子は唇を震わす。
そして、大紋の手を必死で握りしめると、
「…春馬様…そばに…そばにいてください…絢子のそばにいて…どこにもいらっしゃらないで…おねがい…」
なりふり構わず、心の全てを吐露するように掻き口説く。
大紋は冷たい小さな手を撫でさすりながら、頷いた。
「…はい。…ここにおります。絢子さんのおそばにおります。…ご安心ください…。
…ですから、早く良くなられてください…」
こんなにも命を懸けてまで、全身全霊で自分を求める女性を、見捨てて立ち去ることなど、大紋にはできなかった。
絢子を愛してはいない。
愛する人は暁、ただ一人だ。
しかし、その必死な魂の叫びのような言葉を、大紋は無視することはできなかったのだ。

絢子の眦から再び透明な涙が流れた。
「…うれしい…春馬様…」
瞼が静かに閉じられる。
夫人が静かに啜り泣く。
「大紋くん、ありがとう。…恩に着る…」
子爵の男泣きが聞こえる。

大紋は遣る瀬無い思いと、絢子への憐憫の情の中、ひたすらに絢子の顔を見つめているのだった。
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