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暁の星と月
第7章 愛と哀しみの円舞曲
翌日も大紋は西坊城子爵邸を訪れた。
西坊城子爵は官邸に出勤し留守だったが、夫人が有難い表情をしながら出迎えた。

今日は絢子は意識もしっかりし、受け答えも正常になってきたようだ。
傍で絢子を診察していた初老の主治医がさりげなく提案する。
「…今の絢子様には、心の拠り所となられる方におそばについていただくことが何よりの回復の薬です。
…どうか状態が安定するまで、今しばらくお顔を見せて差し上げてください」
主治医は恐らくは、西坊城子爵夫妻から自殺未遂の原因を説明されているのだろう。

部屋を出る主治医に会釈し、絢子の寝台の傍に座る。
「…絢子さん、ご気分はいかがですか?」
優しく微笑みかけると、絢子がおずおずと眼を上げて大紋を見つめた。
「…また、来てくださったのですね…春馬様…」
「はい。…絢子さんがお元気になられるまで、毎日参ります」
絢子の大きな澄んだ眼差しが信じられないように見開かれる。
大紋は一言一言噛みしめるように真摯に語りかけた。
「…それは、私を慕ってくださった絢子さんへの私なりの誠意なのです。…私は絢子さんにはお元気になり、立ち直っていただきたいのです。どうしたら、絢子さんが明るく希望を持って生きていっていただけるか、今、真剣に考えているのです。ですから、私に出来ることは何でもいたします。
…ただ、残酷なことを申し上げるようですが、私の愛する人は変わりません。こんな時に酷いことを申し上げるようですが、絢子さんを愛することはできないのです。
…それでも構わないと仰るのでしたら、私は毎日お見舞いに参らせていただきます。
…そんな男は願い下げだと仰るのでしたら、私は二度とおそばには参りません」
傍に立つ夫人が息を呑む。
「そ、それは…大紋様…。絢子に対して厳しすぎるお言葉ではありませんか…」
夫人の言葉を制するように、絢子がやや強い口調で遮る。
「お母様、良いのです。春馬様は、私のことを真剣に心配してくださっているのです。…こんな愚かなことをしてしまった私を…見捨てずに…」
絢子の青白い頬に涙が流れ落ちた。
「…春馬様…。では、もう少しだけ、絢子のそばにいてください。…もう少しだけ…絢子に春馬様との時間ください…」
大紋は優しく頷くと、その涙をそっと指先で拭った。
「…もうお泣きにならないで下さい…」
しかし絢子の涙は止めどなく流れ落ちるのであった。
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