この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
暁の星と月
第7章 愛と哀しみの円舞曲
絢子は日に日に元気を取り戻し、大紋が訪れると笑顔を見せるようになった。
「お嬢様、大紋様からのお土産でございますよ」
乳母がにこにこしながら、ミントンの果物皿に綺麗に盛り付けられたマスクメロンをサイドテーブルに置く。
絢子がメイドに介添えされながら、上半身をベッドに起こす。
そして、メロンを見つめて驚いたように尋ねる。
「…春馬様が…こちらを?」
大紋は和かに笑いながら、頷く。
「絢子さんが千疋屋のメロンがお好きだとお母様にお聞きしまして。…少しでも食欲が出られると良いなと思い、買い求めました」
「…はい。大好きです…」
絢子の母、喜久子が優しく絢子に匙を持たせる。
「折角大紋様がお持ちくださったのですよ。少しでも召し上がりなさい。貴女は昔から病気になると千疋屋のメロンしか召し上らなかったわね」
まるで幼子に語りかけるようにしながら、絢子の髪を整えてやる。
絢子が両親に溺愛されて育ったというのは間違いではないらしい。
上の姉たちより歳離れて生まれた絢子が可愛くて仕方がないのだろう。
また、絢子もそんな両親の元にすくすく育った純粋無垢な令嬢である。
容姿も、並外れた美貌の暁を見慣れた大紋ですら、認める美しさと愛らしさである。
…さぞやご両親は絢子さんをご心配しておられるのだろうな…。
大紋は絢子を見てしみじみと考えた。

絢子はゆっくりと瑞々しい果肉を載せた銀の匙を口に運ぶ。
「…美味しいです…」
嬉しそうに大紋を見て微笑んだ。
白い上質な綿の寝間着はレースに縁取られ、美しい刺繍が施されている。
結わずに降ろされた髪は艶やかで、恐らくは大紋の訪問前にメイドによって整えられたのだろう。
絢子が少しずつ身の回りに構う気持ちの余裕が出て来たことを大紋は安堵した。
「それは良かった。…たくさん召し上がって下さい」
大紋が微笑むと、絢子は頬を薔薇色に染めて俯いた。

喜久子は乳母らに目配せし、静かに退室した。
絢子が、大紋の訪問を受けるたびに目に見えて元気を取り戻しつつある事に喜久子はほっとしていた。
絢子が、大紋を諦めきれずに自殺を図った時には、全身の血が凍るかと思った。
喜久子は末っ子の絢子が可愛くてならない。
大紋は爵位はないが財力、職業、知性、容姿、人柄と申し分のない人物である。
なんとかして、絢子の一途な初恋を叶えてやりたい。
…それが今や、喜久子の悲願であった。

/479ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ