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暁の星と月
第7章 愛と哀しみの円舞曲
大紋は恥ずかしそうに、メロンを口に運ぶ絢子を見ながら、ふと暁のことを思い出していた。

…大紋が暁の星南学院への編入試験の勉強を見てやっていた時のことだ。
おやつにと、千疋屋のマスクメロンを持参したことがあった。

「…これ、何ですか?瓜ですか?」
まだ縣家に引き取られたばかりで、暁はメロンの存在を知らなかったのだ。
下僕により、上等な果物皿に恭しく載せられたメロンを暁は興味津々といった様子で眺めていた。
その飾らない表情が可愛らしくて、大紋は思わず微笑んだ。
「メロンという果物だ。甘くて美味しいよ。食べてごらん」
大紋の勧めに応じて、おそるおそるといった風にスプーンを手にメロンの果肉を掬い、口に運ぶ。
「…美味しい…!こんなに美味しい果物を初めて食べました!」
美貌だが、いつもどこか淋しい表情が一気に明るく弾ける。
「それは良かった。…たくさん食べなさい」
大紋が笑顔で勧めると、嬉しそうにニ、三口食べたが、やがて静かにスプーンを皿に置いてしまった。
「どうしたの?暁くん?」
やはり口に合わないのかと心配したその時、暁が首を振り、俯いたままぽつりと呟いた。
「…母さんに…食べさせてあげたかったな…て…」
大紋は、いきなり胸をぎゅっと鷲掴みにされた気がした。
「…兄さんに引き取られて…今まで見たことがないようなご馳走を毎日食べさせて貰えて…その度に、母さんに食べさせてあげたかったと思ってしまうんです。…僕だけ美味しいものを食べて…母さんに悪い…て…」
マスクメロンの上に、暁の透明な涙が溢れ落ちる。
大紋は堪らずに、暁を抱き寄せた。
華奢な身体を強く抱く。
「そんなことはないよ。美味しいものをうんと食べなさい。良い経験をたくさんして、これからの人生を輝いて生きるんだ。…それが君のお母さんへの何よりの供養だよ」
大紋の腕の中から、暁が潤んだ瞳で見上げる。
「…大紋さん…」
この美しくも儚げな少年を、自分は愛しているのだと、初めてはっきりと自覚した瞬間だった。

…気がつくと、物思いに耽る大紋を絢子が寂しげに見つめていた。
誰のことを考えていたのか、分かったのだろう。

大紋はふっと表情を変え、絢子に優しく微笑む。
「…たくさん召し上がってください。…早くお元気になるためにも…」
絢子は何か言いたげな表情をしたが、やがて諦めたように小さく笑うと黙って頷いたのだった。
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