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暁の星と月
第7章 愛と哀しみの円舞曲
7月の声を聞いたある夜、暁は礼也とともに九条公爵家主催の夜会に訪れていた。
九条公爵夫人は貴族の夫人にしては珍しく世話焼きで親しみやすく明朗な女性である。
この日も九条邸はそんな夫人を慕ってか多くの夫人や令嬢、紳士、貴族の子弟で賑わっていた。

暁が礼也とともに広間に入るとその場の雰囲気が一気に色めき立った。
礼也は婚約解消したばかりで何かと動向が注目されていたし、自由な立場に戻ったということで、内心喜んでいる令嬢は数知れず…であった。
また、暁は常に若い令嬢達の羨望の的であった。
若き美貌の貴公子は常に憧れられ、噂されていた。
「…縣の暁様は、見目麗しく理知的でお優しく完璧な王子様のような方なのに、なぜ恋人のお噂がないのかしら?」
「大紋雪子様とは特別に仲睦まじまいご様子ではあったけれど、雪子様は英国に留学されてしまわれたし…ね」
「きっと、理想が高くていらっしゃるのね」
ため息混じりの声が聞こえてきそうな夜会であった。

ダンスの時間になり、暁は様々な令嬢達とワルツを踊る。
令嬢達は近くから、完璧な彫像のように整った暁の貌を見上げ、うっとりしつつも、このように凡そ俗世離れした美貌を持つ青年が自分に好意を持ってくれるとも思えず、皆、諦めの気持ちを持つ者が多いのも事実だった。

…縣暁様は、お人形のように美しい。
彼は自分達に柔かに微笑んでくれる。
優しく紳士的に話しかけてもくれる。
しかしそれは、自分達と恋をしたり、或いは愛を交わしたりするような生々しいお相手ではない…
まるでこの世のものとは思えない美しい彫像や絵画のようにそこに存在するだけのものだ。
彼は決して自分達に触れたりはせずに、私達を魅了し続けるだけの存在であるのだと…。
暁の異質な美と色香は自分達に向けられたものではないのだと、無意識に悟らせる存在であったのだ。

たくさんの令嬢達に乞われ、ひとしきりワルツを踊った暁は、やや人いきれに酔い、さり気なく場所を外した。

礼也はまだまだ彼と踊りたがる令嬢達と嫌な貌ひとつせずに踊っていた。
その優雅で美しい姿を遠目でうっとりと見つつ、暁は喧騒を離れ、バルコニーに出た。

外の涼しい夜風に吹かれ、ようやくひと息吐く。
少しだけ、カラーを緩める。
舞踏室の華やかな音楽や人々の笑い声、淑女達の香水の薫りが嘘のように遠のき、暁は密かに安堵する。





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