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暁の星と月
第7章 愛と哀しみの円舞曲
「西坊城絢子様のお母様はわたくしと女学校が同窓なのよ。…絢子様が大紋様に恋をされて…けれどその想いを拒まれてしまったとご心痛されて、ご相談にいらしたの。礼也さんと大紋様がご親友というのをご存知でいらしてね。…なんとかして大紋様と絢子様を添わせて差し上げたいとおっしゃるの。
でも、大紋様には結婚することはできないけれど、愛する方がいると…。なんとかならないかしら…とね。
わたくしには探偵紛いなことをするボディガードがおりますからね」
暁の記憶に、以前自分を拉致しようとしたスーツ姿の男の姿が蘇る。
暁はその光景をまざまざと思い出し、子供のように怯える。
それを面白いもののように見遣りながら、口を開いた。
「…だから、わたくしは大紋様を尾行させたの。大紋様の意中の方はどなたなのか…単純に興味があったしね。…そうしたら…」
きらりと光る陰湿な目が暁を捉える。
「…あの武蔵野の隠れ家に貴方が訪れていた。…そして、朝になると、大紋様と二人で帰っていったわ。…その様子はまるで恋人同士のようだったと…」
蒼ざめた無表情な彫像のような顔で黙り込む暁を鼻先で笑う。
そして芝居がかった様子でため息を吐く。
「…大紋様の愛する方は貴方だったのね。…思ってもみなかった。上手く騙したものだわね。あんなに完璧な紳士を…。さすがは愛人の息子ね。…貴方、その綺麗な顔で色仕掛けで大紋様を誘惑したのでしょう?…本当にお気の毒な絢子様。…こんなに性悪な男娼がいたのでは、叶う恋も叶わないわ」
暁はともすれば崩れ落ちてしまいそうな自分を奮い立たせ、掠れた声で黎子に尋ねる。
「…奥様…。何がお望みなのですか?」
昔は美しかったであろうその顔に、黎子は歪んだ笑みを浮かべる。
「大紋様と別れなさい。…さもなくば、貴方と大紋様の関係を新聞社に売るわ。」
暁の瞳が大きく見開かれ、凍りつく。
「…⁉︎」
それだけでは飽き足らず、黎子は手にした白檀の扇で暁を指した。
「そして、この話を礼也さんに話すわ」
「…奥様…‼︎」
黎子は暁の前まで迫り、蛇のように冷たい眼差しを向けた。
「…男爵家の子息と、若き敏腕弁護士の道ならぬ恋…。ゴシップ紙は間違いなく飛びつくわね。…こんな醜聞が世間に流布したら、大紋様の将来はないわ。…勿論、礼也さんのお名前にも傷がつく…縣家はお終い。いい気味だわ!」
黎子は気が触れたように笑い出した。
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