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暁の星と月
第7章 愛と哀しみの円舞曲
大紋が慌ただしく応接室のドアを開けると、暁がややぼんやりした表情で、窓の外を眺めていた。

暁は、上質な生成りの麻のスーツに、薄い藤色のシャツ、茄子紺のネクタイといった如何にも品の良い御曹司然とした出で立ちであった。
昼間の明るい光に照らされたその端麗で繊細な横顔は、まるで芸術品のようで、大紋は暫し見惚れる。

「暁…」
暁が大紋の声にゆっくりと振り返る。
白いきめ細やかな肌、けぶるような長い睫毛、黒目勝ちの切れ長な瞳はしっとりと艶めいていて、目が合うだけで見るものをぞくりとさせる。
…薄赤い唇がそっと開かれた。
改めて、暁の並外れた美貌を目の当たりにし…大紋は昼日中だというのに、己れの欲情めいた感情を覚えた。

「…春馬さん…」
大紋は気を取り直し、暁を見つめながら笑顔で近づく。
「…暁…、よく来てくれたね」
暁は表情が読み取れない不思議な笑みを浮かべた。
「お約束もなくお伺いして、申し訳ありません」
他人行儀な言葉にやや戸惑う。
「何を言っている。君ならいつでも歓迎だよ。
…暁…、暫く連絡も出来なくて済まなかった…実は…」
青年の華奢な肩を抱こうとする男の腕をするりと交わし、温度のない眼差しで見上げる。
「…絢子さんは、お元気になられましたか?」
「え…?」
大紋の端整な顔に驚きが走る。
「…暁…知っていたのか?」
暁を抱き寄せようとする腕をやんわり制し、
「…女の人の匂いがする…」
と拒む。
「暁、聴いてくれ…絢子さんは…」
説明しようとする大紋を、暁はまるで聴こえていないかのように、慇懃な無視をする。
「…今夜、武蔵野の家に来ていただけますか?」
と静かに尋ねた。
「勿論だ」
「…では、後ほど。…失礼いたしました」
そのまましなやかな身のこなしで応接室を出ようとする。
「暁…!待ってくれ」
真意の掴めない暁に不安を覚え、そのほっそりとした白い手を掴む。
暁は振り返りもせずに呟いた。
「…後ほど、お会いしましょう」
大紋の手はあっさりと離される。

ドアが静かに閉まった。
大紋は、暁の異国の儚げな白い花のような残り香の中、言い知れぬ不安を抱え、立ち竦むのであった。
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