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暁の星と月
第7章 愛と哀しみの円舞曲
暁は不意に醒めた眼差しになる。
「…愛さえあれば良いのですか?…僕はとてもそんな風には考えられません。…春馬さん、貴方はご自分のお立場を考えたことがおありですか?…貴方が気にされなくても、周りはそうは思わないのです。…ご両親はきっと春馬さんに相応しい幸せな結婚を望んでおられます。
…そして僕は…」

暁は再び夏の宵空を仰ぎ見る。
…花火は見えなかった…
下町浅草と武蔵野は離れすぎていて、音すらも聴こえはしなかったのだ。
「…僕は…結婚はしません。それだけでも兄さんをがっかりさせるのに…。
僕はこれ以上、兄さんを悲しませたくはありません。
兄さんは僕の命だから…」
大紋は気色ばむ。
暁の着物の袖を痛いほどに掴む。
「命?…僕はどうなんだ?…僕のことは…君はまだ礼也が好きなのか?僕よりも…⁈」
暁はゆっくりと大紋を振り返る。
その夜の闇より尚黒い瞳は冷たく冴え冴えとしていた。
「…好きですよ。言ったでしょう?…僕は兄さんがいなければ死んでいたのです。兄さんは命の恩人なのです。…その兄さんをこれ以上、失望せたくはないのです。…それに…」
ふっと蓮の花が咲いたように笑う。
「…兄さんは梨央さんとの婚約を解消しました。…僕はこれからも兄さんの側にいられる。…婚約解消を聞いて、僕はほっとしたのです。…兄さんはまだ誰のものでもない…」
嫉妬に駆られた大紋が暁の肩を引き寄せ、睨みつけるようにその美しい貌を見据える。
「礼也は君を愛さない!何度言ったら分かるんだ!彼にあるのは肉親の愛だけだ」
「…例えそうでも…僕は兄さんの側にいられたらいいんです」
「僕のことは…⁈君は、僕のことを愛していないのか⁈」
暁の長い睫毛が一瞬震える。
しかし直ぐさま、薄く微笑うと婀娜めいた貌で囁く。
「さあ…僕は17歳で貴方に抱かれて…肉欲を愛と勘違いしていたのかも知れません…。
絢子さんが貴方を想って死のうとなさったと聞いて、僕は驚きました。…僕は…貴方を想って死ぬことはできない…。…だから…絢子さんは僕よりも貴方をずっと愛しているのですよ。…春馬さん、絢子さんとご結婚なさってください。きっと貴方はお幸せになれる。…もう…これっきりにしましょう…」
淡々と語る暁の顎を力強く捉え、引き寄せる。
「…嘘だ!そんな見え透いた嘘で誤魔化されると思っているのか⁈」
噛み付くように暁の唇を荒々しく奪う。


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