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暁の星と月
第7章 愛と哀しみの円舞曲
「…月城…」
身動きしようとすると、更に強く抱きしめられる。
苦しげな低い声が耳元で囁かれる。
「…私には何も出来ない…暁様と大紋様が結ばれるようにお力になることも…暁様のお辛いお気持ちを癒すことも…何一つ出来ない自分が不甲斐ない…!」
暁は水仙の薫りの胸元でそっと瞼を閉じる。
そして、月城の背中に手を回す。
「…そんなことはない…。こんな話は月城以外には聞いてもらえないし…それに…君の胸は温かい…まるで兄さんみたいだ…すごく落ち着く…」
月城はまるで、自分の弟を優しく慰撫するように髪を撫でる。
「…私に何か出来ることはありませんか…?貴方が涙を流さないで済むならば、何でもいたします…」

暁はふと、月城が恋人になってくれたなら…と一瞬だけ想像し甘いときめきを覚えたが、すぐにその考えを振り払う。

…月城は同性愛者ではない。
僕を身も心も愛することなど出来ないだろう…。
彼は恐らく、生真面目な性格と僕を小さな時から見守っている情愛から、親切にしてくれているのだから…。
…それに…彼の心にはまだ梨央さんが存在しているはずだ。
…僕の春馬さんのように…。

だから暁は彼の清潔なシャツから貌を上げ、その彫像のように美しい貌を見つめる。
「…では時々、こうして抱き締めてくれるか…?
…兄さんみたいに…」
月城の貌が綻んだ。
暁の身体が再び強く抱き締められる。
「…お安いご用です。…暁様…」
「…月城…ありがとう…」
大紋を失った哀しみはまだ癒えはしないけれど、月城の腕の中はまるで天国のように居心地が良かった。
暁はそっと目を閉じ、水仙の薫りに酔いしれた。



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