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暁の星と月
第8章 月光小夜曲
…暁は何度も読み返した手紙を読み返す。
そこには…
…パリに着くと既に連絡を受けていたジュリアン・ド・ロッシュフォールが出迎えてくれ、6区にあるロッシュフォール家が所有しているアパルトマンと仕事を快く紹介してくれたこと、風間は名門オテル・リッツで働き始めたこと、今はコンシェルジュの仕事に就いているが、何れはジェネラルマネージャーになるのが夢だということ、百合子は司の子育てをしながら、近くの仕立屋で得意な洋裁の仕事を始めたこと、器用で几帳面な百合子の仕事はフランス人にも評判が良いこと、司は近くの教会が経営する幼稚園に通い始め既に友達がたくさん出来、フランス語も上達したこと。
…毎日目が回るほど忙しいが、とても幸せであることなどが、暁への溢れるほどの感謝の言葉と共に綴られていた。

…そして最後にはこう結ばれていた。
「…暁、君の青い鳥はもう見つかったかい?」

暁は最後の一文に目を走らせ、小首を傾げて苦笑する。
…忍さんは相変わらず冗談好きだな…。

手紙を丁寧に封筒に戻していると、温室の入口から静かな声が聞こえた。
「…こちらにいらしたのですか…?…相変わらず、夜会は苦手でいらっしゃるのですか?」
振り返るとそこには完璧な執事の制服を身に纏った月城が、美しい彫像のように佇んでいた。

「…月城…」
暁はふわりと微笑む。
そして、ゆっくりと近づいてくる月城に恥ずかしそうに答える。
「…たくさんの人は苦手だ。何を話していいか分からなくなるし…。…兄さんには笑われるけれど…」
月城は眼鏡の奥で優しく微笑む。
「…綾香さんのクリスマスコンサートは素晴らしかったよ。…本当に美しい歌声だ。…それに…綾香さんの声には心がある。…暖かくて、優しくて…とても幸せになる歌声だ」
今日は梨央の異母姉妹の綾香が慈善事業で開いたクリスマスコンサートの夕べであった。
たくさんの招待客が綾香の歌声を聴きに来ていたが、寄付金は全て恵まれない子供達への募金となるのだ。
「私が唄えば子供達が一冬越せるんだもの。幾らでも歌うわ」
コンサート後挨拶に訪れた暁に、綾香は美しい瞳でウィンクしてみせた。

浅草長屋で育ち、苦労して浅草オペラの歌手となった綾香は、北白川伯爵家の令嬢となった今でも、貧しい環境の中で育つ子供達に思いを寄せる美しく情熱的で…時々下町訛りが出るがとても優しい女性だ。










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