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暁の星と月
第9章 ここではない何処かへ
玄関ホールは冷えるので、二人の見送りを辞退し、暁は夕方前に客間を辞した。
ホールに続く長い廊下を歩く暁の少し後ろに影のように月城が付き従うのを感じつつ、黙って歩を進める。

「…暁様…」
珍しく何か言いたげな月城の声が後ろから聞こえた。
「…何…」
「…先ほどの…お話ですが…あの…」
歯切れの悪い声…。
「…いえ、…何でもありません…」
何かを諦めたような声が続く。
「…そう…」
暁もそれ以上は尋ねない。
…尋ねたところで、何も生まないのは分かっているからだ。
…月城は自分に興味はないのだから。
よく考えてみたら、月城が自分に親切にしてくれたのは、暁が礼也の弟だということと、男との道ならぬ恋に破れ、傷ついているのを目の当たりにし、同情したからに違いない。
…月城は…同性愛者ではないのだから、当たり前だ。
暁は自嘲めいた笑みを漏らした。

大理石の床が輝く玄関ホールに出る。
光り輝くシャンデリア、代々の当主の肖像画が飾られる名門貴族らしい素晴らしいホールだ。
月城は暁の前に立つ。
この豪華絢爛な屋敷に相応しい美しく端正で怜悧な執事だ。

今日、初めて暁と眼差しを交わす。
いつもより温度がある瞳のような気がしたが、暁はすぐに自分の自惚れを振り払う。
「…暁様、私は先日大変失礼なことを申し上げてしまいました。…そのことを一言お詫びを申し上げたいのです」
…先日…?
暁は思い返す。
「…ああ、兄さんのことか…」
…まるで暁が礼也に恋をしているようだと言うことを、月城は言っていた。
暁は寂しく笑う。
「…別に構わない…兄さんを好きなのは事実だ。…君の目にどう映っているかは分からないけれど…」
「…いいえ、そうではありません…私が申し上げたいのは…」
月城はやや歯がゆそうに否定した。
…だがその先の言葉を彼が発することはなかった。
暁は寂しげに笑う。
「…いいんだ、月城。…君が僕を慰めようとしてくれているのはよく分かる」
「…暁様…?」
「…君は同性愛者ではない。…だから僕の気持ちを理解しようとしなくてもいいし…その…」
暁は思い切って月城を見上げる。
「…僕に興味を持つ振りをしなくてもいい…」
月城の切れ長の瞳が眼鏡の奥で見開かれる。
「…暁様…」
「…正直、僕は君に惹かれたけれど、それももうやめる」
…綾香はああ言ったが、もう恋はしたくない…
だからこれでいい…。


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