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暁の星と月
第12章 堕天使の涙
次の日曜日の夕方、暁は気がつくと麻布十番の月城の自宅に脚を向けていた。
…毎週行くと、まるで僕が本当に淫乱みたいで気が引けるな…。
暁は小さく溜息をついた。
…月城は、僕が行くのは性的欲求で…だと思っているだろうし…。

もちろん、月城とのセックスは気持ちが良い。
暁の身体をまるで宝物のように扱ってくれ、快楽だけをお腹いっぱいに食べさせてくれるようなセックスだ。

…けれど、僕が月城の家に行くのはそれだけが目的ではない。
…月城に会いたい、月城の貌が見たい、月城に笑いかけてほしい、月城の温もりが欲しい、月城のそばにいたい…。
そんな理由なのだ。
…だが、そんなことは口が裂けても言えはしない。

なぜなら…月城は僕を愛していないからだ。
…月城が僕を抱くのは、憐れみと責任感からだろう。
僕を14歳の時から知っていて…兄さんに道ならぬ恋をしていることも、春馬さんと哀しい別れをしたことも、何もかも分かっていて、自暴自棄になりそうな僕を放って置けなくて、抱いてくれるのだ。

…その証拠に…月城は僕にまだただの一度も、好きと言ってくれたことはない。
僕を抱けるのだから嫌いではないだろうけれど…好きではないのだろう。

…そんな男の家に毎週通う僕は、月城の眼からどう映っているのだろうか。
さぞ、滑稽なのだろうな…。

暁はふっと自嘲的に笑う。
…けれど、そんな思いをしてまでも、自分は月城に会いたいのだ。

暁は月城の家の玄関の前に立つ。
…いつもは必ず点いている玄関の灯りが点いていない。
試しに引き戸に手を掛けると…
鍵がかかっていた。

…留守か…。
暁は失望の溜息を吐く。
…しかし…帰るという選択肢は彼にはなかった。
暁は庭の桜を見つめながら、玄関の扉にもたれかかり、待つことにした。

…待つことは苦ではない。
月城はきっとその内に、この家に帰ってくるのだから…。
…暫くすると、春の暖かい雨がしとしとと降り始めた…。
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