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暁の星と月
第12章 堕天使の涙
「本当にすばらしかったわ。…ジゼルが死んでしまうとところは涙が出てきて仕方がなかったわ…」
光は上野の文化会館から帰宅し、生田に迎えられ、コートを預けながらも興奮したように暁に話しかける。
暁はそんな光をにこやかに見つめる。
「光さんは感受性が豊かでいらっしゃいますね」
上質なシルクの白い春のコートの下は、シャンパンゴールドのシルクシフォンのイブニングドレスだ。
ミルクのように真っ白な肌にはダイヤモンドの首飾りが煌めく。
胸の谷間が深くなっているのは妊娠しているせいだろうか。
肩紐のみのドレスなので、殊更に光の豊かな真っ白な乳房が目立つ。
女性の身体に全く関心がない暁だが、光の美しい身体のラインや造形美には目を奪われる。
長く重かった悪阻が終わり食欲が戻った今、光は少しふっくらとしたようだ。
元々細すぎるくらいにスレンダーな光なので、今の体型は女性らしく魅力的だ。

しかし、妊娠中だからといって大人しく引き込もっている光ではないので、礼也はやきもきしていた。
「光さんがお転婆をしないよう、よく見てやってくれ。
帰りにバーに行きたがっても止めてくれ」
朝食の席で暁は礼也に託されたのだ。
光は大変な酒豪だ。
今は妊娠中なので酒は我慢しているが、外出して気が大きくなったら…と心配で仕方ないらしい。
ふと、暁は思う。
…ご結婚される以前は、兄さんの心配は僕のことだったのだけれど…。
「…はい、お任せください。兄さん」
暁は兄に分からないように少し寂しげに微笑んだ。

バレエの演目はパリ・オペラ座の「ジゼル」だった。
悲劇的、かつ幻想的なロマンチックバレエを光は涙を浮かべて堪能していた。
終幕近くのジゼルが恋人のアルブレヒトをウィリ達から庇う場面では涙を零した。
光は一見姸のある豪奢な美女なのだが、こんなところはまるで少女のようだった。
隣の席の暁はそっとハンカチを差し出した。

「暁さんとご一緒できて良かったわ。…会場のお嬢さんたちは皆、暁さんをご覧になっていたわね。
羨ましそうなお顔で私を見ていて…とても気分が良かったわ」
屋敷の大階段を上りながら、光が振り返り笑う。
暁は苦笑する。
「兄さんとご一緒の時の方がずっと注目されていますよ…」

美男美女の夫婦ということも勿論だが、見合いの最中に乱入し、光を連れ去った駆け落ち婚は当時華族新聞の紙面を飾ったほどだ。






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