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暁の星と月
第12章 堕天使の涙
暁は静かに口を開いた。
「…それは…ありがとうございます…。
お気に掛けてくださり、嬉しいです。
…でも、今夜はもう遅いですし、お出かけの後で光さんもお疲れでしょう。お身体に触るとよくありません。
…早めにお休みになった方がよろしいのではありませんか?」
「大丈夫よ!…みんな妊娠を大袈裟に考えすぎだわ。
妊娠は病気ではないのよ。自然なことなのだから、過敏になることはないのよ」
光は陽気に笑いながら、暁の腕を取る。

…自然なこと…。
男の暁は妊娠することは出来ない。
したくても出来ない。
男の性だけれど、女は嫌いだ。
性交渉もできない。
恋する対象は男だ。
男でないと感じない。
…それらを告白しても、光はまだ自分とこんな風に親しげに話してくれるのだろうか…。

光は暁の思惑も知らずに、無邪気に自分の部屋に誘う。
「さあ、いらして。…とっておきのコニャックがあるわ。…もちろん私はいただかないから安心して」
光の柔らかですべらかな肌が暁のテイルコートの袖に触れ、人懐っこく握りしめられる。
暁からは光の豊満な白い胸の谷間が見下ろせた。

…兄さんは、どうやって光さんを愛するのだろう…。
下衆な考えと分かりつつも想像することを止められない。
僕には女性を抱くことは出来ないけれど、普通の男性には光さんのような極上の女性を妻に出来ることは最大の喜びなのだろう。

…そして、月城は…。
彼もいずれは妻を娶るのだろう。
…春馬さんのように…。

耐え難い胸の痛みを感じ、暁は思わず貌を歪めた。
光は気づかない。
「ね?私はおとなしくホットミルクをいただくから…」
屈託なく暁を部屋に招き入れようとする。

…と、その時…。
玄関ホールが慌ただしくなった。
執事の生田がドアを開け、下僕が出入りするのが大階段の頂上から見えた。
光は階段の欄干に駆け寄り、嬉しげに声を上げた。
「礼也さんがお帰りだわ!思ったより早かったわね」
暁はそっと胸を撫で下ろす。
光と二人で話すことは一先ず回避できたからだ。
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