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暁の星と月
第12章 堕天使の涙
まるで愛の告白のような眼差しと言葉に、胸が疼く。
…だが、勘違いをしてはいけないと、暁は明るい笑顔を作り、冗談混じりで答える。
「大丈夫だ。…僕はよく落馬するから受身は上手いんだ」
そう言って起き上がろうとすると、すかさず月城が背中を支える。
「大丈夫ですか…?」
思わず見上げると、くちづけするような距離で眼差しが交差する。
月城が暁の頬に手を伸ばそうとするのを、咄嗟に避ける。
「…暁様…」
「…あの…ありがとう…わざわざ…来てくれて…でも…大丈夫だから…」
俯く暁をじっと見つめる気配がする。
月城が駆け付けてくれて泣きたくなるほどに嬉しいのに、素直に月城を見ることができない。
今、月城を見たら…自分は完全に彼に縋ってしまう。
光への罪悪感と自己嫌悪に塗れた自分が、月城を頼ってしまうのが怖かったのだ。

黙り込んだ暁に、穏やかに話しかける。
「…先ほど、病院の玄関で縣様と光様にお会いしました。
暁様は光様を庇われて階段を落ちてしまわれたと伺いました。
光様は大変感謝されておられました。…ご自分とお腹のお子様をお守りくださったのは暁様だと…。
…本当に、よくぞ危険を顧みずになさいましたね…。さすが暁様です。
貴方は本当にお優しいお方だ」
月城の賞賛の言葉が鋭い刃のように突き刺さる。

暁は耐えきれずに叫んだ。
「…違う…」
「…え?」
「…違うんだ…僕は…優しくなんかない…」
震える白い手の甲に涙が滴り落ちる。
「暁様…?」
震える唇を噛み締めながら、暁は懺悔するかのように告白する。
「…僕は…本当は…光さんを階段から突き落とそうとしたんだ…!」
月城の息を呑む音が聞こえた。
「暁様…何を…」
暁は涙を浮かべた瞳で月城を見上げる。
…これで月城に見限られても構わない。
軽蔑されても構わない。
自分を偽るのはもう嫌だった。
全ての真実を男に聞いて欲しかった。
告解にも似た気持ちで、暁は語り始めた。




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