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暁の星と月
第13章 暁の星と月
寝室に着くと、月城は暁を丁寧に床に降ろした。
「…もうどこも痛いところはありませんか…?」
月城のひんやりとした大きな美しい手が暁の貌の線をなぞる。
「…うん。大丈夫…」
暁は睫毛を瞬かせて月城を見上げる。
眼鏡の奥の瞳は冴え冴えと澄んでいて、高い鼻梁と形の良い唇とともにまるで西洋の彫像のような美しい貌だ。
「…君は綺麗だな…」
美しい男は兄や大紋で見慣れていると思っていた。
だが、月城の美貌はまるで氷の彫像のように冴え渡り、透明感があり、人形のように完璧に整った端麗な美しさだった。
この欠点がないような美貌の男が自分を愛してくれるのかと思うと、喜びと共に身の置き所がない不安のようなものに襲われさえする。
「…暁様のように美しい方に仰られると照れます。貴方こそ、ご自分のお美しさをお分かりではないようだ…。
…このお美しい方が…私だけのものになったのですね…」
感に耐えたように低く呟き、暁の顔を引き寄せる。
「…そうだ。…僕はもう…君だけのものだ…」
暁はうっとりとしたように月城を見上げる。
「…君だけ…ん…っ…」
その後の言葉は形を為さなかった。
暁の言葉は月城のくちづけに吸い取られ、飲み込まれる。
甘く狂おしいくちづけが繰り返される。
「…私だけのものだ…!」
吐息交じりの男の言葉に、身も心も蕩かされる。
月城は暁に何度も角度を変えながら、濃密なくちづけを繰り返す。
くちづけしながら、しなやかな動きで暁のジャケットを脱がせ、ネクタイを解いて行く。
有能な執事の彼は、主人の衣服を解いてゆくことに淀みがない。
魔法のように衣服を脱がされ、暁はシャツ一枚の姿にされると宝物のように褥に横たえさせられる。
覆いかぶさろうとする月城に小さく声を上げ、暁が押し留める。
真剣な眼差しが月城を見つめる。
「…どうしましたか?」
「僕は大事なことを聞いていなかった…」
「何ですか?」
「…君の名前だ…」
…どうして今まで聞かずにいたのだろう。
とても大事なことなのに…!

切なげな貌をする暁の髪を優しく撫でる。
「…森です」
「…しん?」
「はい。森林のしん…です…」
「…月城森か…」
大切な呪文のように繰り返し、暁は目を細めて笑った。
「…いい名前だ…。君らしい…綺麗な名前だ…」
月城は貌を近づける。
「初めて親に感謝します…」
二人は吐息を交わしながら微笑った。





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