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暁の星と月
第13章 暁の星と月
暁は自分の部屋を首を巡らせてしみじみと眺める。
…兄さんにこの部屋を与えてもらった時は、信じられなくて、興奮してなかなか寝付けなかったな…。
今まで朽ちかけたようなあばら家に住んでいた暁にとって、ここは絵本で見たお伽話の王子様の部屋に見えたのだ。
…それからもまるで僕は王子様みたいに大切に育ててもらった…。
兄さんには感謝してもし足りない。

…今はきっと僕とは口も聴きたくないだろうから、その言葉も伝えられないけれど…いつかは…
…いつか、改めて兄さんに感謝の気持ちを伝えたい。

…いつか…きっと…。

暁はドアのノブに手を掛ける。
ドアを開けようとしたその瞬間…

暁は背後から突然抱きすくめられた。
「すまない…!すまない…暁…!」
驚きのあまり、息が止まる。
「…私は…私は今までずっとお前を苦しめていたのか…?何も気づかずに…お前を傷つけていたのか…?」
暁の首筋に温かいものが滴り落ちる。
「…兄…さん…?」
兄は泣いているようだった。
「…許してくれ…暁。…私が鈍感で無神経だったせいで、お前をどれだけ傷つけていたのか…。お前のことを一番分かっていると自惚れていた私を許してくれ…!」
震えが止まらない暁を礼也の温かい手が抱き締める。

…それはまるで、14歳のあの日…。
ヤクザ者に拉致されそうになった暁を救い上げ、強く抱きしめてくれたあの温かい手と全く同じだった。
「…お前をとても愛しているよ。…。だがそれは肉親としての愛だ…。すまない…。お前の愛に応えてあげられなくて…」
律儀な兄の言葉…。
兄らしい、慈愛溢れた言葉…。
暁は子どものように首を振り、泣きじゃくる。
「…そんな…そんな…兄さん…いいんです…」
礼也はゆっくりと暁を自分の方に向けさせた。
兄の男らしい切れ長の瞳は涙で潤んでいた。
そして、いつもの優しい兄の眼差しと口調で告げたのだ。
「…お前が誰を愛そうと、お前は私の大切な弟だ。お前の幸せを誰よりも願っている。…だから、お前は私の弟として…縣家の息子として、誇り高く生きて行きなさい」
涙が溢れる瞳で見上げる。
「…兄さん…!」
礼也は明るく微笑った。
「一人暮らしは許すが、会社を辞めることは許さんぞ?それからお前の家探しは私も参加する。…いいな?」
「…兄さん…」
そうして、泣き笑いの暁の髪を昔のようにくしゃくしゃと掻き混ぜたのだった。
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