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暁の星と月
第3章 暁の天の河
ハイヤーは縣邸の車寄せに静かに、滑り込む。
暁は大紋をゆっくりと振り返った。
暁の繊細な白い手は、大紋によって痛いほど強く握りしめられていた。
「…暁くん…!」
大紋の切れ長の眼差しは瞬きもせずに、熱く見つめる。
暁は大紋の目を見つめたまま、口を開く。
「…降ります…」
ハイヤーの運転手がドアを開くために、車外に出る。
車内は束の間、二人きりの空間となる。
大紋が抗い切れぬ情熱を感じさせる力で強く手を引く。
暁は大紋を振り返り、僅かに微笑む。
「…おやすみなさい、大紋さん」
ようやく手にした宝物を取られまいとするかのように、大紋は無意識に暁の手を握りしめた。
そして、
「…本当に…僕の別荘に来てくれるんだね…?」
と、低い声で熱く囁く。
暁は一瞬長い睫毛を伏せ、そして改めて大紋を見上げ頷く。
「…伺います」
お互いの吐息が触れ合いそうな距離、大紋は暁の白磁のように滑らかな頬に触れようと片手を伸ばし…首を振る。
そして、万感の想いを込めてゆっくりと握りしめていた指を解く。
「…ありがとう…」
「…いいえ…」
暁は夜に咲く白い陰花植物のように密やかに笑った。

しなやかな動きで車から降りる。
テイルコートの裾がひらりと翻り、ガス灯が揺らめく玄関ホールに佇んだ暁は精巧な西洋人形のように美しく…そして艶めいていた。
暁の帰宅を聞きつけた執事の生田が重いドアを押し開け、現れる。
彼はハイヤーの中の大紋に気づき、丁重にお辞儀をする。

暁は優雅な仕草で大紋を振り返り、告げる。
「…おやすみなさい、大紋さん。…夏休みを楽しみにしています」
「…おやすみ…」
暁は生田に大切そうに迎え入れられ、重厚なドアの向こうにそのすらりとした繊細な後ろ姿を消した。

大紋はその残像を暫し追い続け、さきほどまで確かにこの手の中にあった白く華奢な美しい手を思い浮かべ、掌を開く。
…指先に小さく、まるで朱の三日月のような暁の爪痕が浮かんでいた。
「…暁…」
大紋はぎゅっと掌を握り込んだ。


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