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暁の星と月
第3章 暁の天の河
礼也は暁のことなら手に取るように分かるのだ。
そのことが暁には嬉しくも、とても切ない。
暁は必死で首を振る。
「いいえ、違います。梨央さんのことではありません。
…僕も少し人見知りなところがあるでしょう?だからこの夏は違う環境で過ごして自分を鍛えようかな…て」
真摯な眼で語る暁をじっと見つめ、礼也はやや寂しげに溜息を吐く。
「…お前も大人になりつつあるんだな…」

暁の繊細な美しい少女のような美貌を見つめながら、弟の成長に感慨を覚える。
…昔は、休みの日は私の側から片時も離れなかったのにな…。

暁は星南でも社交界でも、美しく賢く洗練された貴公子として、大人気だった。
完璧な美貌と知性を兼ね備えながらも、少しも偉ぶらずに控えめで優しいところが良いのだ、と耳打ちしてきた貴婦人もいる。
まだ暁には知らせてはいないが、気の早い縁談話も降るようにある。
暁には心から愛する人に巡り会ってほしいので、礼也がそつなく断っているのだ。

…それに、暁はまだ子供だ…。
…いや、そう思いたかったのは自分だ。
暁をまだまだ側に置いておきたいのは、礼也なのだ。
私は、子育てを終えたくない父親のような気持ちなのかも知れないな…。
礼也は、自嘲気味に苦笑いする。

そして、踏ん切りをつけるかのように、いつもの礼也の朗らかな温かい笑みを浮かべ、頷いた。
「では、夏休みは春馬のところで過ごさせてもらいなさい。…ただし、必ずうちにも度々顔を出しなさい。…出来れば梨央さんが見えるときも、顔を見せてほしいんだ。お前は私の自慢の弟なのだから…。いいね?それから…私も何日か、春馬の別荘に泊まりに行かせてもらうからな」
心配性な父親のような礼也の言葉に、暁は胸がきゅっと締め付けられるのを感じた。
…兄さん…
本当は、僕もずっとこうして兄さんと過ごしていたい…
でも…

「はい。約束します。ありがとう、兄さん…」
暁は熱いものがこみ上げてくるのを必死で堪えながら、返事をした。
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