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暁の星と月
第3章 暁の天の河
「よし!では今年の合宿はこれにて終了だ。…次の練習日は…9月の始業式が始まってからだが、特に大会出場者は自主練しに馬場に行くように。いいな。では解散!」
三年の部長の声が馬場に響く。

馬術は紳士のスポーツなので礼儀に厳しい。
馬場から退場するのも上級生が先だ。
暁は三年生の退場を待っていると、副部長の風間忍が馬に乗ったまま暁の方へと近づいてきた。

いわゆるシルクハット型の乗馬帽と黒い燕尾型ジャケット、ホワイトタイに白い乗馬ズボンに黒い長ブーツが決まりすぎるほど決まっているのは、風間の服やブーツなどが特注品だからだと密かに噂されていた。
星南学院は自由な校風だが、それにしても校則ぎりぎりの長髪が華やかな容姿と共に酷く目立つ。
馬術部の活動は比較的真面目だが、学業や素行の評判は凡そ芳しくない。授業はサボりがちだし、一度は他校の女学生が風間に夢中になる余り家出をしてしまい、警察沙汰にまで発展した。
父親がホテル王ということでいわゆる成金呼ばわりされるのもどこ吹く風と気にする様子もない、飄々とした捉え所がない先輩ではあった。
だから後輩たちはどこか風間を敬遠している節があったのだ。

その風間が暁の前で馬を止めた。
そして、華やかな美貌に艶めいた笑みを浮かべ、暁に話しかける。
「…縣、君はこれからどうするの?東京に帰る?」
星南学院はブルジョア階級の子弟が大方である。
合宿を終えた後、そのまま軽井沢の別荘で残りの夏休みを過ごす生徒も多い。
風間と滅多に話したことがない暁は、緊張しながら答える。
「はい。このまま兄の友人の方の別荘に参ります」
「…へえ…」
風間の薄茶の瞳が面白そうに輝く。
…風間先輩のお祖母様はロシア貴族のお姫様で、サンクトペテルブルクに留学していた先輩のお祖父様と大恋愛の末、日本に渡り結婚したらしいよ…。だから風間先輩はクォーターなんだよ。
…と、まことしやかな噂を暁に囁いた同級生がいたが真偽のほどは分からない。
だが、そんなドラマチックな逸話も頷けるほど、風間の容貌は日本人離れしたものだった。
その綺麗な瞳に思わず見惚れていると、風間は美しい髪を靡かせ馬場の入り口を振り返り、鞭で指差す。
「…あの人のところ?…君の兄さんじゃないよね?…ああ、でも随分ハンサムな人だな」
驚いて暁も振り返る。
そして思わず小さく叫んだ。
「…大紋さん…!」




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