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暁の星と月
第3章 暁の天の河
大紋は、その場を立ち去ろうとした暁の華奢な手を掴み、背中から抱きしめる。
大紋の筋肉質な力強い腕の中で、暁のほっそりとした身体がびくりと震える。
大紋は、この腕の中に捉えた愛しい想い人を決して離すまいとするかのように強く強く抱きしめた。
「…知っていたよ…君が礼也を兄としてではなく、恋していることを…」
「…嫌…離して…」
消え入りそうな声で暁が抗う。
初めて暁の抵抗に遭い、大紋は我を忘れて暁を抱きすくめ、かき口説く。
「…聞いてくれ、暁くん。…僕は君がずっと礼也を想っていることを知っていた。…君の礼也を見る眼差し、声、体温…全てが礼也の為に捧げられていたことも…」
「…嫌…!やめてください…!聞きたくない…!」
耳を塞ぎ身を捩る暁の腕を捉える。
「聞くんだ!…辛いかも知れないが、聞いてくれ。
…君がいくら礼也を愛しても、礼也は君が愛するように君を愛することはない」
「…嫌だ…!」
「…あいつは君を本当に大事に思っている。君を愛している。…でもそれは兄としての愛情だ。血を分けた兄弟として君を愛しているんだ。それはこの先、君がどんなに礼也を愛し続けても変わらない」
「やめてください!」
暁は渾身の力を込めて大紋を突き放す。
大紋の腕から逃れた暁は自分の身体を抱きしめながら、震える声で話し出した。
「…そんなこと…貴方に言われなくたって分かっています…兄さんが僕を弟としてしか見てないことや…兄さんが梨央さんを誰よりも深く愛していることや…全部…全部分かっています…でも…!でも…兄さんは僕の全てなんです…兄さんは…僕の命なんです…!」
月明かりが暁の陶器のように白く滑らかな頬に伝う涙を煌めかせる。
悲劇的なまでに美しい少年の姿に、大紋は思わず見惚れる。
暁は自分に言い聞かせるように、静かに語り始めた。

「…兄さんは、僕が母を亡くして…やくざのような男たちに襲われて…もう駄目だ…死んでしまいたいと思っていた時に、そんな地獄から救ってくれたんです…。兄さんは痩せ衰えて…みすぼらしい僕を…優しく抱きしめて、詫びてくれたんです。
…知らなくてごめんね…。もう大丈夫だよ。…私が君を守るから…て。…本当は腹違いの弟の面倒を見る義理なんかないのに…。兄さんは…本当に優しくて…強くて…ずっと僕を守ってくれた…。縣の奥様と対立してまで…。だから…僕の…ただ1人の人なんです…」
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