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暁の星と月
第3章 暁の天の河
暁がこの奇妙な気詰まりな雰囲気をどうしようと困惑していた時…
「忍さん!いつまで私を放って置く気?」
着飾った令嬢が不意に現れ、苛立ちながら風間の腕を引っ張る。
席に1人で置いていかれ、業腹になったらしい。
風間は令嬢に甘く微笑み、腰を抱く。
「ごめんごめん。…後輩と再会してつい嬉しくてね。…すぐに戻るから、席に着いていて。…ほら、スープが来たよ」
令嬢は不承不承踵を返したが、帰り際に暁を睨むことは忘れなかった。
暁は、緊張に身体を縮める。

「…じゃあ、またね。…縣、良かったら僕の別荘に遊びにおいで。待ってるよ」
暁の滑らかな白い頬にそっと触れる。
暁は曖昧な笑みを浮かべた。
「…では、大紋さん。失礼いたします」
「…ご機嫌よう、風間くん」
大紋の口調は、まるで三文芝居の役者のように棒読みだった。
風間が自分のテーブルに戻ったのを見届けると、暁は座りながら大紋に詫びた。
「…すみません。…お騒がせしてしまって…あの…」
大紋の端正な顔に珍しく怒りの色が浮かんでいる。
シャンパンを一気に煽ると、やや荒っぽくテーブルに杯を置いた。

「…彼はいつもああなの?」
…こんなに険しい顔の春馬さんは初めてだ…。
暁は小さな声で済まなそうに謝る。
「…すみません。…風間先輩はいつも賑やかな人なんです…」
「そうじゃなくて…いつもあんな風に暁に馴れ馴れしいの?」
「…え?」
苛立ったように暁の顔を見つめる。
「いつもああやって暁の身体に触れるの?」
「…あ…」
…漸く大紋の不機嫌な意味が分かった暁は、少し微笑む。
「…何が可笑しいの?」
「…あの…もしかして…焼きもちを焼いていますか?…風間先輩に…」
大紋がばつが悪そうに、咳払いをして居住まいを直す。
そして観念したかのようにぼそりと呟く。
「…そうだよ…」
暁は、優しく諭すように答える。
「…それなら心配はいりません。…風間先輩はああいう性格なんです。開放的で人懐こいだけですから」
大紋が眉を顰め、暁の手を握る。
「暁、君は純粋だから分からないんだ。…あいつはかなりの色悪だよ。気をつけなさい」
暁は大紋の手を握り返す。
「大丈夫です。…だって…僕の恋人は春馬さんだけですから…」
大紋の手が暁の手を締め付ける。
「…暁…!」
「はい」
耳元で熱く囁く。
「…早く二人きりになりたい」
暁は耳朶を朱に染めてそっと頷いた。



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