この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
愛してるから罪と呼ばない
第1章 逃避行
誠二は、飽きもしないで香凜を親密なまぐわいに誘う。
脚の間を我が物顔で貫く狂気。誠二に備わる、雄独特の生殖器は、異質であって狂っていた。ざらついた舌が愛撫して、火照った厚い皮膚がくるんだ指が這うと、あとは野生的な欲求が憤った肉棒がねじ込まれてゆく。
誠二の、もはや劣情とも呼べない自己顕示欲を満たさんとしているような甘い蹂躙に敷かれる内に、香凜の自己嫌悪は最高潮に追い立てられる。あの狂気を孕んだ凶器。あれが女の蜜壺を貫くなら、いっそ心音まで引き裂いてくれまいか。
自己嫌悪を自暴自棄に変換するには、香凜は未練を抱えすぎていた。
優しい肉親、親身な友人、そして朗らかな姑。新婚生活はおどろおどろしくても、美衣子の心配りは心地好かった。
恋に恋する他に、香凜は満たされる術を知らない。広く言えば、世間が香凜を幸福と呼ぶ定型で、懐柔していた。
進学も就職も結婚相手も、自ら選んでいたようで、香凜自身に潜在していた蒙昧が仕向けてきたのではなったか。無難な成績、無難な進路、無難な会社に無難な相手。世間の感覚で洋服を選んで化粧して、世間の感覚でものごとを思考してきた。
現に、今も、両親や友人らの祝福の余韻に縋って、美衣子のまごころにほだされている。美意子にしてみれば香凜など、おそらくただ息子のパートナーに過ぎない。友好的な根拠はそれだけなのに。
そこまでの意識があっても、香凜は世間の思考を外れられない。知らないからだ。やはり許容された枠の中で、努力するより他になかった。