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愛してるから罪と呼ばない
第2章 そのマカロンはまるで宝石



 今年もこの日を迎えたのだ。

 五年前、私は彼と誓いを交わして、生涯を添い遂げようと約束した。

 今朝は例年にもれなく手の込んだモーニングで彼を起こして、美術館、ジュエリーショップ、ファッションビルへと足を運んだ。パティスリーHamadaと同様、ファッションビルにも今日は星音ちゃんがいない。私は新しいネックレスの返礼に彼の欲しがっていたアウターをプレゼントして、そのあとカフェでブログを上げた。


 気負いしていた結婚記念日が、今こうしてとりとめなく過ぎていく。過不及なく準備はしていたものの、私が慮っていたほど星音ちゃんが引きずらなかったのと同様、私が気負いしていたほどこの日は重大な事件になりそうにない。


「スプリングコート、有り難う」

「こちらこそ」

「ダイヤじゃなくて良かったの?」

「ムーンストーンが好きなの。眩しくないから」

「つばきさんはいつもそう言うね」


 …──眩しいのは君で十分ってところかい?


 プティガトーの感想より面白味のある言い草に、私は笑った。



 私の表層は、どこまでも世間から見て正しい。それが理想を求めてきた私の結果か、それとも理想に応えてきた結果か。

 仮に最近話題になった女優のように、星音ちゃんと私の関係が露見したとする。
 正しかった私の姿は、忽ち彼らからして異端者に変わり果てるのか。私は非難を浴びせられて、同時に、昨日までと何ら変わりないあの可憐な星音ちゃんの見目も、彼らの目に忌々しく映る。

 世間は事情を知りたがらない。
 私がパティスリーを設立して、運良くメディアに取り上げられるようになった経緯より、華やかな結果だけに注目したがるのと評価したがるのと同様だ。


 だから私は打ち明けられない。

 星音ちゃんがどのようにして生きてきて、何を感じて考えたかより、けだし世間は私と関係を結んだ事実だけを取り上げて、非難の標的にするのは目に見えている。



 私達はワインボトルをキープして、ラウンジを降りた。

 濱田つばきは洒落たデートを好んでも、結局のところ私宅をコーディネイトするのを好む。彼へのサプライズプレゼントを隠したマカロンタワーが、冷蔵庫で待ちくたびれているはずだ。
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