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愛してるから罪と呼ばない
第2章 そのマカロンはまるで宝石
そうした粗探しに今日も手を出していた私は、やはり報いられることになった。
可愛い手製のモーニングに、いかにも知識人らの集うような美術館の展覧会、ショッピング。…………
たった今更新された記事は、ラウンジの写真が並んでいた。
高層ホテルの店らしからぬ花畑が広がって、星空がすぐ真上に広がっていた。ジルコニアのブレスレットを嵌めたつばきさんの左手には、白金色の炫耀を浮かべるシャンパングラス。
そこでやめておけば良いものを、一端夕餉をとったあと、またぞろ私はつばきさんのブログにアクセスしていた。私がたった二つのマカロンを賞味していた間、つばきさんのパートナーは、マカロンタワーの一角を胃袋に収めたらしい。彼のために用意されたパステルの塔の中枢部には、白い薔薇のブリザードフラワー。花を贈るイメージはなくても、スイーツに花を添えるサプライズは、つばきさんらしい。
つばきさんの作ったものが食べたい。柔らかで美しい彼女の欠片を体内に注いで、彼女の指の触れたもので、私の内側を撫で尽くしたい。
やおら求めて、思い直す。
つばきさんの作ったものなら、たった今、喉に通したばかりだ。
僅か二つのマカロンは、これだけ煩悶としている私の胸を、尚も甘く満たしていた。
顔も知らない男を羨みながら、私は教育係の事務員が寿退社した三年前ほどの喪失を感じていない。
つばきさんがそういった女性ということを分かっている所以かも知れない。パートナーをライフスタイルとして、私の声を好いている人。私はそうしたつばきさんをこそ、彼女だとして認識している。