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愛してるから罪と呼ばない
第2章 そのマカロンはまるで宝石

* * * * * * *

 私には私の定位置があって、かの人にはかの人の定位置がある。

 つばきさんの天秤は、その傾きが彼女の配偶者に著しくなったところで、私の皿が重みをなくすことはないと信じてきたから、彼女の口から飛び出す男の名前を耳にしても、私は心中穏やかだった。


 ブログにしても、仕方がなかった。

 私が動画を配信する際、需要層に応じたユーザーを気取っているのと同様、つばきさんもお客さん達の理想である必要がある。ことにマカロンの専門であるパティシエが、結婚記念日にパートナーのための丹精込めたマカロンタワーを披露するのは当然のこと、しない方がもったいない。


 割り切った私の口振りは、おそらくあくまで無邪気だった。



 マカロンタワーのプレゼント、憧れるなぁ。…………



 私がつばきさんの聴覚内で呟いたのは、彼女がことごとくロマンティックで豪奢なデートを満悦した翌週のことだ。先週末は控えていたつばきさんへの接触を、例のイベントが終わった途端、私は何事もなかった顔で解禁していた。


「星音ちゃんなら、ストロベリーとバニラかな」

「えっ……」

「挿し色にフランボワーズなんか入れても良いかも。うーん、星音ちゃんなら必死で写真とか撮ってくれそうだから、思いっきり可愛いのを考えないと……」


 パティスリーHamadaは、ラストオーダーを終えていた。定時に上がって、少し街を散策したあと顔を出した私の他にお客さんの姿はなく、今は従業員らも厨房の片付けを始めている。従って、店には二人だけだ。
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