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愛してるから罪と呼ばない
第2章 そのマカロンはまるで宝石
「本当にすごい……可愛すぎる……私のために、ここまで気合い入れて下さったなんて、なんか誕生日でもないのにもったいない……」
「言ったでしょ。作りたいから作りたかったんだって」
「動画にしても大丈夫ですか?」
「スキャンダルになるって言ってたのは、どこの誰だったかな」
「いざ目にしたら、しない方がもったいなくて……」
「ふふ、冗談」
私はシャッターを切りながら、この写真をどのように編集しようか考える。考えながら、つばきさんの朗らかな声に答える。つばきさんと会話しながら、データフォルダがいやが上に埋まっていく。…………
視界をおどろおどろしい絶壁が覆った気がした六日前の記憶が、吹き飛ぶように遠ざかる。
「じゃ、冷たくて美味しい内にいただこうかな。つばきさん、良いですか?」
「もちろん。味もしっかり感想が欲しいもの」
熱を伴う心地の好い音を立てて、ポットから紅茶が注がれていく。
私の選んだのは、苺とルバーブのブレンドティーだ。通常の苺の紅茶に酸味を重ねた、フルーティーなフレーバーらしい。つばきさんはミルクジャーに温めた牛乳を満たしてくれていた。この紅茶を選んで正解だった。華やかな塔を形造るマカロンは、見たところ、バニラや苺、フランボワーズで出来ている。
「どの辺にしようかなー」
つばきさんは、おりふし迷いながら私の分を取り分けていく。
私のためのマカロンタワーは、実は例の傑作より遥かに凝っているのではないか。数色のクリームはマカロンを繋ぎ合わせるためだけではなく各箇所での装飾の役目をなしていて、無造作に見えてやはり計算づくだろうランダムに配置されたペパーミントやベリー類、アイシングのリボンやハートがあちらこちらに散らばっていて、天辺には玩具のティアラ。無論、それも砂糖菓子の匂いがする。
「いただきます」
貴重な菓子を与えられた子供の仕草で、私はそろそろとフォークを動かした。