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愛してるから罪と呼ばない
第2章 そのマカロンはまるで宝石
最初の一口を口に入れた瞬間、総身が恍惚とした光に包まれた。
舌をとろかすのはたとしえない甘さ、ただ甘いと呼べるだけのものではない、つばきさんの指が生み出したそれは、どこまでも奥ゆかしく濃密で、あらゆる食感、風味、感覚が、私の感動を統べていく。幻のように軽くしっとりしたマカロン、挟んであるバタークリームのほろほろと舌の上に消えてゆく、香りだけが後を引く濃厚さはさることながら、クリームもアイシングも、内側に隠れていたクランブルも、フルーツも、どこをとっても比肩するものがない。
「すごい……美味しい……いえ、美味しいのはいつもだけど……」
「私もいただきます」
「わ、え……カスタード?こっちは……、うそ、桜……?」
「ああ、そこが入ってたんだ。桜のリキュールを練乳クリームに混ぜてみたの。全部同じクリームだと飽きるかなと思って」
マカロンは、私が見た目から推測していたフレーバーに加えて、桜とブルーベリーもあった。今年は時期の過ぎたフレーバーを、二ヶ月前、私はよく注文していた。
「お代わり、いける?」
「まだまだいけます!」
「嬉しいわ、貸して。……良かった、私も美味しい。練習した通り、満足な出来だわ」
オーナーでも、自由に休めるわけではない。経営業の合間を縫って、つばきさんがけだし私の想像もつかないほど熱心に今日の準備を進めてくれていたのだと思うと、切ないような熱が胸を締めつける。