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愛してるから罪と呼ばない
第2章 そのマカロンはまるで宝石
想うだけで満たされるほど、私のつばきさんへの想いは掴みどころのないものではなくなっていた。
かたちにこだわらない関係など、所詮は理想だ。指輪と指輪の契約に繋がれていない事実を一笑に付していた私は、自己暗示を試みていたのに過ぎない。
かたちが欲しかった。
つばきさんの想いが、言葉が、望めるなら記念日が。
私が写真を残したのは、動画のためではない。私が生きていく上で、つばきさんの想いのこもったマカロンタワーは霞まない記憶にならなければならなかった。
自他共に認めるいわゆる甘党の私は、つばきさんと二人でマカロンタワーを平らげることは造作なかった。土台に敷いてあったスポンジも、桜の香るシロップを吸っていた。
つばきさんと私が話すようになって、明後日で二ヶ月経つらしい。
記念日というものに悋気していた割に、私はつばきさんが言い出すまで意識していなかった。
友人としての交流にとどまる可能性もあった、もとより有名パティシエと何のブランドもない事務員とでは突拍子もない縁なのに、二ヶ月前、私はつばきさんの願望を叶えた。つばきさんが密かに視聴していた動画の配信主が私だった。
ティーセットが片づけられても、私は興奮冷めやらない。しょっぱい夜食で、一晩を過ごせるほど腹を満たすと、私達は寝支度をした。
車の音も聞こえない時刻になっていた。一度取り替えられたティーポットは、今はノンカフェインのローズマリーティー。
「先週はあんなにやきもきしていたのに、噓みたい」
「え?」
「つばきさんのお相手さんが羨ましいなって、ブログ見て思っていたのに」
「星音ちゃん、それは──…」
「あ、構わないんです。つばきさん楽しそうだったから、つばきさんの素敵なブログは私の目の保養にもなるし」
「本当に?」
「…………」