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愛してるから罪と呼ばない
第2章 そのマカロンはまるで宝石
かたちはいらない。
欲しいものは、自分本位な幸福より、愛する人の望む未来。
私に根づいた綺麗事は、つばきさんにも言えるのか。
大学時代の同級生らに、いつでも取り残されてきた。消極的で諦めがちで、本音を遮蔽してまで心の安寧を守ってきた。それで何か失くしたわけではない。失くせるものを得なかったからだ。
それでも私はこれまで通り、つばきさんの幸福だけを望むのか。もはや綺麗事を綺麗事と認めてしまった今も尚。…………
「ちょっとは妬いて欲しいかな」
私の建前を疑ったのと同じくらい、つばきさんの口調は軽かった。
「星音ちゃんの私が、他の男の人にべったりだったのに。何とも思ってもらえなかったら、女が廃ったみたいじゃない」
「…………」
なんて可愛いのだ。この人は。
可愛いものや綺麗なものが好きな自分を好いている。
そうしたひととき、私の胸はまるで高鳴らなかったのに、今は猫の舌が心臓をしゃぶり回しているのではないかと錯覚しかねないほど胸が熱く、くすぐったい。
腕を回したつばきさんの上体は、マカロンを思い出す湿りようだ。ただ、冷たかったそれと違って熱い。
私の体温が染み透ったのか。つばきさんの胸奥にも高揚がもたらす熱が灯ったのか。
心音を差し置いて、薄着を押し出すたわわな乳房が私のそれに当たるせいで、彼女の高揚がどれほどかは判らない。
ちゅ…………
私はつばきさんの膨らみを感じて、絡み合う腕に顫えながら、触れた唇に酔いしれる。
唇は乳房ほど弾力があって、メレンゲほど感触がない。刹那のキスは幻がもたらす夢のように、甘く曖昧な記憶に残る。曖昧なものを確かめるように、続いて長めのキスを交わす。