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愛してるから罪と呼ばない
第3章 真夏の花達


「ひなびを見てひと目惚れした人に、私、怒られそう」

「私がゆうりにひと目惚れした人に怒られるの」

「ひなびと違って、私はモテないし。けど、こんなとこでひなびに声かけてくるような人がいても、私のお姫様は任せたくないな。そんな軽い人間に、ひなびはもったいないから」

「そんなこと、──……」


 ただでさえ距離をなくしかけていた二人の肩と肩とが、すれ合った。彼女のパステルピンクのエクステの混じったロイヤルミルクティー色の巻き髪が、ゆうりのピンクがかったシャギーの茶髪の流れに寄り添う。


「ガラス工芸館に行って、ランチして、水族館観て、そのあとなら日差しもゆるくなってるよね」

「うん、海に降りるならちょうどだと思う」

「わぁい、貝さんたくさん拾うのぉ。はぁ……ゆうりと二人で旅行なんて初めてで、やりたいことたくさん……。たまにはこういうのもどきどきわくわくっ」


 黄金色の日差しを弾く海のさざなみを遠目に眺めて歩きながら、時折、ゆうりは傍らのひなびを盗み見る。

 ひなびの黒目がちな双眸は、ベージュとピンクのニュアンスカラーを添えた目許で甘く濡れた煌めきを湛えて、透けるような肌に、苺の香りの透明薬用リップの艶の浮かんだ唇、ミルクに浮かべた薔薇の花びらを想わせられる頬の血色は、化粧とは思えないほど彼女に馴染みきっている。
 洋服は、BABY,THE STARS SHINE BRIGHTの人魚柄のワンピース。赤を好む彼女にしては珍しく、所々に青が入って夏らしい。
 かくいうゆうりも日頃は赤を選びがちだが、姉妹ブランドALICE and the PIRATESの、ターコイズブルーが差し色のボルドー基調の皇子服。来る途中、通りすがりの女子高生達が人魚と王子のようだと内緒話していたが、もしひなびが人魚なら、ゆうりは彼女を泡にしない自信がある。
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