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愛してるから罪と呼ばない
第3章 真夏の花達
* * * * * * * *
ガラス工芸館は、海にも優って、夏休み中の恋人達の穴場だ。
ほの暗い館内は、几帳面にショーケースに展示されたガラス製の芸術品が鼈甲色の光を吸い、それだけで雰囲気がある。多角形に細工されて惜しみなく輝きを放つ人形、淡い色彩を刷いた雑貨は千差万別の炫耀をまとい、幻想的だ。
「あっ」
つと、ガラスの宮殿のミニチュアの前に足をとめたひなびが声を上げた。
無色透明の宮殿は、淡い七色の光を閉じ込めていて、歴史の資料集から抜け出てきたように精巧だ。庭園にまで、あらゆる種類の極小の花が、無数に散りばめてある。
「綺麗……」
「だねっ。あのね、このお城、今度BABY,THE STARS SHINE BRIGHTから出るシリーズに似てる!」
「そうなの?」
「ん、秋の展示会に置いてあったの。この前、本社の人が来て、採用になったって聞いたのぉ。黒とアイボリーと赤とピンクとネイビーの夜景に、こんなお城が描いてあって、ガラスの花が降ってるの。きれーい……良いなぁ……ガラスのお城……」
ひなびの垂れ目がちな双眸が、とろけんばかりの色を帯びる。
彼女は、愛用している洋服ブランドの直営店に勤務している。ひと足先に最新情報を得るのも、毎度のことだ。