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愛してるから罪と呼ばない
第3章 真夏の花達
「あっ、ひなび。は、早かったね」
意図せず声が裏返った。
全く状況は違うにしても、浮気が見つかりでもした焦りに近いものが、ゆうりを襲った。
「ただいまぁ。……へ、変?」
ひなびのパステルピンクのエクステの混じった髪から、小粒のしずくが、その肩にかかったタオルにしたたり落ちた。
ゆうりの挙動不審の原因を、自分の浴衣姿だと勘違いしたらしい。いじらしく両手を胸の前に寄せたひなびは、不安げに眉をひそめて首を傾げた。
「変なはずないよ。とっても綺麗。ただ、……刺激的すぎない?」
「浴衣が?普通だよぉ。お客さんの半分くらいは、着てたよぉ。ゆうりも着よー」
「私は、もう半分のお客さんになっとく……」
「浴衣美人なゆうりが見たいー」
ひなびの声音が甘ったるさを増す。
それでも、無理なものは無理だ。
色っぽすぎる。可憐すぎる。浴衣姿のひなびは美しすぎて、否、湯上がりのひなびが美しい。もはや神の領域に達している。
ゆうりは、ひなびというイデアが目の前にいてこそ、彼女と全く同じものに袖を通すという真似が出来ない。
壁の向こうから、奇妙な声が聞こえてきたのは、突然のことだ。