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愛してるから罪と呼ばない
第3章 真夏の花達


「ん……」


 他のパーツとは打って変わって飾り気ない沙織の人差し指が、ゆうりの唇を制した。

 二十以上歳上の女の悪戯げな微笑みに、挑発的な色が差す。


「やっぱり、そういう気分じゃないかも」

「え?」

「お姉様ぁっ、まだですかぁ?」


 甘えたトーンのソプラノが、にわかにゆうり達の間に割って入った。

 はっとして沙織を見る。


「お友達とご一緒だったんですか?」

「えっ、ええ。そう、お友達」

「お姉様、早く戻ってきてくれないと、待ちきれなくて一人でイッちゃうかも知れませんー」

「…──っ」


 ゆうりは、今度こそ沙織の顔がひきつったのを見逃さなかった。


 認めたくなかった。初めから予感していたのに、誤解であることを期待していた。

 聞こえていた声の主は、ポルノ映像のM嬢ではない。沙織を慕って屈辱さえ快楽として耽溺する、屈託ない乙女だったのだ。


「社長。お友達の方、呼ばれてます」

「ごめんなさい。昔、仲良くしていた……、ベッドでのお友達なの」

「プライベートに押しかけて、すみませんでした。私もひなびを一人にさせているので戻ります。お疲れ様です」

「待っ──」


 ゆうりは沙織の客室を出ると、彼女の声を振りきって、元いた部屋に引き返した。
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