この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
愛してるから罪と呼ばない
第3章 真夏の花達
* * * * * * *
ゆうりがひなびと二日目の観光に選んだのは、英国庭園風の公園と、テディベアミュージアムだ。それから日が暮れると、二人、例の砂浜に降りた。
夕まぐれの海岸は、巧妙な絵画を見ているようだ。さざなみの音が、しめやかな小夜曲を奏でている。
「ついに、念願の、貝拾い!」
「昨日は海外の人達に、写真撮らせてくれって並ばれて、時間押しちゃってたもんね。BABYやALICEって、外国でも人気あるんだ。結局あの人達、どこの国の人だったんだろ」
「うーん……頑張って英語喋って、断ってたのにね。ゆうりと私だって観光客で、一分一秒惜しいのに。英語は通じなかったから、多分、それ以外」
「アメリカ人っぽかったのに」
「人は見かけじゃないんだねぇ」
ひなびが赤いフリルで縁どってある白いスカートを押さえながら、緩慢な動作でその場に屈む。
「見て見てー。貝」
ひなびのすべすべの手のひらに、真っ白な巻き貝が一つ乗っていた。
「白いねー。ひなびみたい」
「私?」
「うん。ひなびと言えば赤やピンクだけど、なんか、やっぱり白い」
ゆうりもひなびの隣に屈んで、貝殻を集めていた籠を置く。
赤いリボンを結んだ籠の中に、ひなびの手から、白い巻き貝が入っていった。