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愛してるから罪と呼ばない
第3章 真夏の花達
「ね、ゆうり」
「ん?」
「私の気のせいならごめんね。疲れてる?昨日から、えと……社長さんとばったり会ったっていうあとから、心配事あるみたいな顔っていうか……」
「──……」
垂れ目がちな、他人を疑うことを知らないようなひなびの視線。今は怖い。見透かされてしまいそうだと思う。
沙織がゆうりの知らない女と旅行していた。しかもあんなに過激な情事まで。
恋人面して、沙織と女に事情を聞き出し、洗いざらいに吐かせて懺悔させれば良かったかも知れない。さんざん「貴女だけ」だと口にしておきながら、別の女と関係を持っていた沙織を罵って、絶縁を言い渡すべきだったかも知れない。
だが、ゆうり自身、沙織にとって都合の良い部下でしかない。社内では付き人、社外ではデートの相手、世間からすれば愛妾だ。
一番でなくて構わなかった。沙織には忘れ難い女がいる。功利婚だったとは言え、配偶者もいる。
それでもゆうりは、沙織の欲望やかなしみに、縋って繋がれていたかったのかも知れない。