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愛してるから罪と呼ばない
第1章 逃避行
菜穂とのメールが香凜の気をもたせていた。女の文体、女の感性、女の気配り。顔と名前以外を知悉しないメールの相手は、同じ屋根の下で起臥している誠二をしのいで、香凜にときめきを与える。
"リリカちゃん観てる?"
"うん"
"ってことは、彼仕事行ったんだ"
"うん"
"じゃあ、香凜も外、行かない?"
菜穂は、香凜にリリカのDVDを流させたまま自慰を命じることもあれば、野外での課題を出すこともあった。
この日、菜穂が命じたのは、コンビニエンスストアへ向かうこと。そこでリリカの緊縛グラビアが載っているという週刊誌の最新号を立ち読みして、疼いてきたところで店員に手洗い場の場所を訪ねる。バックヤードを通過して、便器に至って、パンティをバッグに仕舞い込む。そこから香凜の脚と脚の間を保護するものは、ローターだ。振動音を響かせて、医療用のテープで挿入物を固定すると、売り場に戻って週刊誌を購入して、帰宅する。
香凜が一連の課題をこなし終える頃、下半身のテープは粘着性をなくしていた。ローターを引き抜くと、香凜の右手を無色透明のとろみが広がった。
菜穂は、平日でも日が沈むまで香凜の相手が出来る時がある。香凜に痴女同然のパフォーマンスをさせたあとは、褒美を与える。リリカのDVDを鑑賞しながら、特別に太いディルドを存分に咥え込むというものだ。
香凜はDVDを起動した。洋服も下着も全て除いて、ブラウン管の前に座る。今日香凜が選んだのは、リリカの出演作品でも特に過激なSMジャンルだ。
女を覆った肌色に、紅や青紫が散らばってゆく。なまめかしい暴力が、香凜の脳に麻酔のような背徳感をもたらす。女体が加虐に歪められて、リリカの頼りなげな音声が、まるで下級動物の悲鳴になり下がる。
『あっ……ああんっ!あん、あっ……はっ……ん!』