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愛してるから罪と呼ばない
第1章 逃避行
貴女もそういうことに関心があったのね。
美衣子の第一声が、香凜に昏倒を免れさせた。
「このDVDのようなことを、してみたいと思わない?」
美衣子の手指が香凜に伸びる。
優雅な紅茶を淹れる指。香凜のネイルを眺めるために、香凜の片手を掬い上げた指。
それだけで感動を与えた手指のあるじが、香凜に腕を巻きつけた。
一糸まとわぬ香凜の肢体に、美衣子をくるんだ衣服がこすれる。
香凜は、菜穂にメールを送った。秘めやかな遊戯を姑に知られてしまった。猛烈な憂慮のメールが寄越されてきた。何かあったら相談に乗る。いつでも電話をかけてきても構わないし、万が一居場所がなくなったら家に来い。返ってきたのは、あれだけ後腐れを忌んでいた女のメールとは信じ難いものだった。
美衣子は香凜に身なりを正させると、タクシーを呼んだ。
一時間弱シートに揺られて到着したのは、片岡家の管轄下にある工場だ。美衣子が任されているという。従業員の九割は女らしい。敷地内には数軒の建物が並んでいて、徒歩で一周するには一時間はかかろう広さがある。
「着ているものを、お脱ぎなさい」
美衣子が足をとめたのは、中庭だ。昼餉時間帯らしく、噴水を囲って散らばるベンチは、弁当やコンビニ袋を持った従業員らに埋まりつつあった。彼女らは美衣子に頭を下げて、朗らかな雇用主と二言三言を交わしては、友人との歓談に入る。