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愛してるから罪と呼ばない
第1章 逃避行


「今時AVに出ている女優なんて、脱ぐか脱がないかの違いだけ。人気があればアイドルみたいな仕事もするわ。一般人の私がアイドルに引けをとらないはずないじゃない」

「いいえ。美衣子さんの仰る通り、本当に似ています。あ、もちろん、美衣子さんはあのように淫らな行為はなされませんけど……」


 どのみちリリカは、香凜の好みだったのかも知れない。美衣子自身、リリカに似ていることを自覚していた事実を知った今、複雑な罪悪感が香凜を咎めはしたものの。アダルト女優に似ている。美衣子の例もあって、そうした種類の映像作品に対する認識に個人差はあろうが、香凜なら純粋に喜べない。


「どうかしら……」


 美衣子の呟きは、何に対する反応なのか。

 リリカに似ていることに対してか、それとも淫らな行為をしなかろうという香凜の予想に対してか。





「お疲れ様」

 人事部室には、香凜より五つほど年長と見られる女がいた。六畳ほどのオフィスは整頓が行き渡っており、女は香凜らの姿を認めるや、腰を折った。

「今、急ぎの仕事は?」

「特には」

「では、悪いけれど下がっていてくれないかしら」

「かしこまりました、社長」


 女が扉の向こうへ消えた。


 DVDのようなことをしてみたいとは思わないか、そう言って美衣子は香凜を連れ出した。

 香凜が昼前に観ていたDVDに則るとすれば、ここは募金活動のあとのシーンだ。社長は人払いをしない。

 のべつ思わせぶりな態度をとる美衣子は、香凜の期待を煽っては、裏切る。それが普通だ。代表取締役がリリカの濡れっぷりを罵るのに便乗して、社員も部下に罰を下す。ままごとであれそんなことが現実に起きれば、下手をすれば報道の沙汰だ。
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