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愛してるから罪と呼ばない
第1章 逃避行

* * * * * * *

 無遠慮に粘膜をかき分けていた竿が抜け出ると、香凜を組み敷いていた配偶者がひと仕事終えた調子で息をついた。


「疲れた?」

「ううん」

「気持ち良かった?」

「うん」

「だと思った。香凜の中、すごかったからね」


 質の悪い手羽先が長くなったような腕が、香凜に抱きつく。

 誠二の匂いの染みたシーツで、誠二の胸にとりこめられる。



 自分は今、どこにいるのか。


 香凜は居場所を見失う。片岡家の寝室、時期家長の腕の中。現実は目に見えて、肌に感じられているのに、そこにいるのがまるで香凜自身に思えない。



「さて、おやじはいつ、オレに仕事を教えてくれるかな」

「急にどうしたの?」

「大学まで行かせてもらって、行きたいところに就かせてもらって。おやじは社会勉強のためだって言ってたけど、オレは、早くおやじの力になりたい。おふくろだって、下請けで頑張ってる。オレも片岡家の一員だ、親孝行すべき歳だろ」



「…………」



 偉いね、と、口にするのがやっとだった。
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