この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
愛してるから罪と呼ばない
第1章 逃避行
* * * * * * *
無遠慮に粘膜をかき分けていた竿が抜け出ると、香凜を組み敷いていた配偶者がひと仕事終えた調子で息をついた。
「疲れた?」
「ううん」
「気持ち良かった?」
「うん」
「だと思った。香凜の中、すごかったからね」
質の悪い手羽先が長くなったような腕が、香凜に抱きつく。
誠二の匂いの染みたシーツで、誠二の胸にとりこめられる。
自分は今、どこにいるのか。
香凜は居場所を見失う。片岡家の寝室、時期家長の腕の中。現実は目に見えて、肌に感じられているのに、そこにいるのがまるで香凜自身に思えない。
「さて、おやじはいつ、オレに仕事を教えてくれるかな」
「急にどうしたの?」
「大学まで行かせてもらって、行きたいところに就かせてもらって。おやじは社会勉強のためだって言ってたけど、オレは、早くおやじの力になりたい。おふくろだって、下請けで頑張ってる。オレも片岡家の一員だ、親孝行すべき歳だろ」
「…………」
偉いね、と、口にするのがやっとだった。