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愛してるから罪と呼ばない
第1章 逃避行







 薄暑の闇が覆った深更、香凜は美衣子と口づけながら、互いの衣服を除いていた。


 香凜の鼻孔を悩ませる美衣子の香りは、コンディショナーだけに限るまい。香凜のかつての恋人も、口にしていた。同じものを使っていても、まるで違う。香凜の匂いは特別だ、と。


「色っぽいです……美衣子さん。どきどき、します」

「毎日見てるじゃない」


 前髪と前髪までキスした。美衣子の手のひらが香凜のうなじを抱いて、耳を撫でて頬を包む。

 化粧を落とした美衣子の肌は、こうも間近で見ていても、美しい。香凜が不安になるほどだ。美衣子にとって、香凜はとるに足りない女なのではないか、雑念がよぎる。


「何度言っても言い足りません。美衣子さん、本当に綺麗だから……」


 美衣子の片脚を内股に挟む。太もも同士で撫で合いながら、香凜は美衣子にもたれかかった。美衣子の指が、香凜の最後のホックを外した。ブラジャーから先走った乳首が覗いた。


「いやらしい、香凜。美衣子さんは?」

 菜穂がスマートフォンを手放した。シーツに皺を刻んだ機体の液晶には、黒髪の清楚な女優が映っている。

「リリカみたいに、パンティは自分で脱いでみよっか」


 菜穂の指先が美衣子のおとがいを突き放すと、香凜のはにかんだ恋人は、しずしずとレースの紐を下ろしていった。

 薄毛の覆った恥丘の下方から、女の匂いが昇り立つ。既に部屋を淡く染めていた匂いだ。


「ふぅん……こういうの、なんだ」

「見られてるって、恥ずかしい……」

「元パートナーにも見せていたでしょ」

「こんなにじっくり、見られなかったわ」

「なら、もっと恥ずかしい目に遭ってみよう。膝を立てて、脚、開きな」

「……ええ」


 ぬらぬらと湧き出た肉色の泉は、美衣子の脚と脚の中心で、燃えるような欲望を主張していた。

 菜穂が寝台に屈んで、美衣子の陰核に指を立てた。その指が、くに、と、小さな蕾を押さえたまま円を描く。芯の通ったメゾが切なげに鳴いた。
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